介護施設での糖尿病の過剰治療を実態調査 日常生活動作スコアが低下 米調査
糖尿病治療に際して、かつては多少の低血糖をいとわず厳格な血糖管理を行うことが、全般的な予後の改善につながると考えられていた。しかし現在では、低血糖を可及的に回避することの重要性が認識され、特に高齢者では厳格な血糖管理が認知機能や生命予後に影響を及ぼしかねず、管理目標を緩和することも推奨されている。ただし、このような比較的新しい知見が、介護施設に居住する糖尿病患者の治療にどの程度反映されているかは、これまで十分に把握されていない。
Lederle氏らは、米国退役軍人省が運営する介護施設居住者のうち、糖尿病を有する高齢者を対象とするコホート研究を実施して、血糖管理状況と処方内容との関連を検討した。解析対象者は、2013~2019年に30日以上、介護施設に居住し、居住期間中のHbA1cが記録されていた65歳以上の2型糖尿病患者7,422人(平均年齢74.6±7.9歳、男性98.4%、HbA1c7.1±1.4%)。
血糖管理にインスリンが処方されている場合、HbA1cが6.5%未満を「過剰治療」と定義した。また、インスリンが処方されHbA1cが6.5~7.5%未満、および、インスリンが処方されずにメトホルミン以外の血糖降下薬でHbA1cが6.5%未満の場合は、「潜在的な過剰治療」と定義した。ベースラインのHbA1cがそれらの基準に該当し、14日以内に処方が緩和されていない場合を、「継続的な過剰治療」とした。
解析の結果、糖尿病患者の17%が過剰治療に該当し、23%が潜在的な過剰治療に該当していた。また、過剰治療該当患者の73%、および潜在的な過剰治療該当患者の81%が、その後も処方変更されておらず、継続的な過剰治療に該当した。
長時間作用型のインスリンが処方されていること〔オッズ比(OR)1.37(95%信頼区間1.14~1.65)〕、および、入居から最初のHbA1c測定の間に300mg/dL以上の血糖値の記録があること〔OR1.35(同1.10~1.66)〕は、継続的な過剰治療のオッズ比上昇と有意に関連していた。
一方、日常生活動作スコア(Minimum Data Set-Activities of Daily Living;MDS-ADL)が19以上で定義した重度の機能障害を有することは、継続的な過剰治療のオッズ比低下と有意に関連していた〔OR0.73(同0.56~0.95)〕。他方、低血糖の既往は、処方の変更と有意な関連がなかった。
以上より、介護施設に居住する糖尿病患者に対する治療が個別化されておらず、過剰治療が少なくないという実態が明らかになった。著者らは、「われわれの研究結果にもとづき、介護施設で暮らす糖尿病患者の過剰治療を減らし、適切な治療へと変えていく戦略的な対策が重要だ」と述べている。
[HealthDay News 2021年3月25日]
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