ヨーヨーダイエットが1型糖尿病患者の腎臓病リスクを大幅に上昇 体重管理の長期維持も重要
数年間で体重の増減を繰り返すヨーヨーダイエットは、1型糖尿病患者の腎臓病リスクを大幅に高めるという調査結果を、米国内分泌学会が発表した。
これまで1型糖尿病患者は、低体重(やせ)が多いことが知られていたが、最近では肥満の有病率が上昇しているという。
「1型糖尿病患者の治療戦略では、体重の安定化が健康状態に良い影響を与える可能性がある。体重管理の長期維持にも重点をおく必要がある」と、研究者は指摘している。
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1型糖尿病患者の体重変動の高さはDKDの進行に関連
数年間で体重の増減を繰り返すヨーヨーダイエット(体重サイクリング)は、BMIなどのリスク要因に関係なく、1型糖尿病患者の腎臓病リスクを大幅に高めるという調査結果を、米国内分泌学会が発表した。
研究は、フランスのボルドー大学病院内分泌・糖尿病・栄養科のMarion Camoin氏らによるもの。研究成果は、「Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism」に掲載された。
これまでの報告では、ヨーヨーダイエットは一般人だけでなく2型糖尿病患者でも、また最近では1型糖尿病患者でも、心血管イベントのリスクを高めることが示されている。男性の35%、女性の55%が、このパターン経験しているという調査結果もある。
「これまで1型糖尿病患者は、低体重(やせ)が多いことが知られていたが、最近では一般人口と同様に、肥満の有病率が上昇している」と、Camoin氏は指摘している。
「1型糖尿病患者のDKDの進行にともなう、さまざまなリスクとアウトカムの増加と、体重の変動性の高さは、従来のDKDリスク要因とは関係なく、関連していることがはじめて示された」と、Camoin氏は述べている。
体重変動が大きい患者はeGFRが40%低下 クレアチニン値も2倍に
研究グループは今回、1型糖尿病および糖尿病合併症の管理について、米国などで実施されたDCCT、およびその終了後に実施されたEDICに参加した1,432人の患者の体重変動などの6年間のデータを遡及的に解析した。
ヨーヨーダイエットのパターンを識別するために、個人の平均体重の上下変動を測定する、「平均とは無関係な変動性(VIM:Variability independent of the mean)」を主な指標とした。
さらに、推算糸球体濾過量(eGFR)などを含む、腎機能の低下と腎臓病に進行に関する6項目と、体重変動データとの関連を調べた。
その結果、体重変動が大きい患者の高VIMは、ベースラインからのeGFRの40%の低下[HR 1.25、95%CI 1.09~1.41、P=.001]、血清クレアチニン値の約2倍の増加[HR 1.34、95%CI 1.13~1.57、P=.001]、腎臓病のステージ3への進行[HR 1.36、95%CI 1.12~1.63、P=.002]、eGFRの年間3mL/分/m²超の低下と、それぞれ有意に関連していることが示された。
糖尿病が腎機能悪化の一因ではあるものの、糖尿病以外の要因が原因である腎障害も含めた疾患概念である糖尿病関連腎臓病(DKD)は、顕性アルブミン尿をともなわないままeGFRが低下する腎疾患も含まれる。
VIMは、中等度および重度のアルブミン尿の増加とも関連していたが、追跡調査の共変量を調整した後では、関連性は有意ではなかった。他の指標を調整した後でも、同様の結果がみられたとしている。
1型糖尿病の治療戦略では体重の安定化も必要
体重の増減と腎臓病リスクをむすびつける病態生理学的メカニズムは完全には解明されていないものの、1型糖尿病のインスリン療法が体重の増減に寄与している可能性があるなど、研究者はいくつかの仮説を提示している。
さらに、体重の増減が心臓にさらなる負担をかけ、腎臓や血管の損傷に寄与する可能性も指摘している。
「1型糖尿病患者の治療戦略では、体重の安定化が健康状態に良い影響を与える可能性がある。体重管理の長期維持にも重点をおく必要がある」としている。
Yo-yo dieting may significantly increase kidney disease risk in people with type 1 diabetes (米国内分泌学会 2025年2月4日)
Body-weight Cycling and Risk of Diabetic Kidney Disease in People With Type 1 Diabetes in the DCCT/EDIC Population (Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism 2025年2月4日)