妊娠中の高カロリー食が子供の肥満を誘発するメカニズムを解明 オステオカルシンが肥満を予防

2021.11.05
 九州大学などの研究グループは、妊娠中の母体の高カロリー食摂取が次世代の肥満や生活習慣病の原因になるメカニズムを明らかにしたと発表した。

 妊娠母体の過栄養が、仔の成熟後のエネルギー代謝異常や肥満に関与し、骨芽細胞が産生するタンパク質であるオステオカルシンがそれを回避することを、動物実験で証明した。人でも同様のことが起きている可能性が高いとしている。

妊娠中に高カロリー食を摂取していた母親の子供は肥満やインスリン抵抗性に

妊娠中に高カロリー食を摂取した母親マウスの産仔では、成熟後に肥満や糖・脂質代謝異常があらわれた。これには、肝臓でのPygl遺伝子のメチル化異常によるグリコーゲン分解異常が関与していた(左)。
一方、妊娠中のオステオカルシンの経口摂取は、Pyglの発現を上昇させ、グリコーゲン代謝を改善し、仔の肥満を予防した(右)。
出典:九州大学、2021年

 研究では、母体の妊娠中の高カロリー食摂取は、仔の肝臓でグリコーゲンホスホリラーゼ(Pygl)遺伝子に異常なDNAメチル化が生じ、その発現を低下させることが明らかになった。

 DNAメチル化は、DNA鎖の塩基の炭素原子にメチル基修飾が生じる化学反応で、転写制御を担うプロモーター領域がメチル化されると、その遺伝子の発現が抑制される。

 その結果、肝臓のグリコーゲンは分解されにくくなり蓄積する。通常は空腹時には肝臓のグリコーゲンが分解されて、枯渇すると、脂肪が分解されてエネルギー源になる。

 しかし、妊娠中に高カロリー食を摂取していた母親の産仔では、グリコーゲン分解が起こりにくいため、脂肪が分解されにくく、体脂肪が蓄積し、その結果として肥満やインスリン抵抗性を呈するようになるという。

 さらに、研究グループは、妊娠母体が経口摂取したオステオカルシンが、Pyglの発現を増強させることで、産仔の肝臓のグリコーゲン代謝や肥満の改善作用をもつことを明らかにした。

 「これまで、病気の原因は、主に遺伝や出生後の環境にあると考えられてきましたが、出生前(妊娠母体)の環境因子も、病気の発症に影響を及ぼすことが証明されました。妊娠期あるいは授乳期の栄養管理の重要性を医療関係者のみならず、多くの方に知っていただきたいと思います」と、研究者は述べている。

 研究は、九州大学大学院歯学研究院OBT研究センターの安河内友世准教授と福岡歯科大学口腔医学研究センターの平田雅人客員教授の研究グループによるもの。研究成果は、国際誌「Molecular Metabolism」にオンライン掲載された。

九州大学大学院歯学研究院OBT研究センター
Hepatic glycogenolysis is determined by maternal high-calorie diet via methylation of Pygl and this is modified by osteocalcin administration in mice(Molecular Metabolism 2021年10月19日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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