SGLT2阻害薬「ジャディアンス」が腎臓病の進行と心血管死を抑制 CKD治療薬として推奨 EU
SGLT2阻害薬「ジャディアンス」が腎臓病の進行と心血管死を抑制 相対リスクを28%低減
ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、欧州医薬品庁(EMA)のヒト用医薬品委員会(CHMP)が、SGLT2阻害薬「ジャディアンス」(一般名:エンパグリフロジン)を、慢性腎臓病(CKD)の成人患者の治療薬として承認することを推奨する肯定的な見解を採択したと発表した。
ジャディアンスは現在、血糖コントロールが不十分な成人2型糖尿病患者の治療薬として承認されており、また世界各国で、成人の左室駆出率を問わない心不全患者の治療薬として承認されている。
日本でのジャディアンスの効能・効果は2型糖尿病、慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)であり、心血管イベントおよび腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。慢性心不全に対する治療薬として承認されているのは、ジャディアンス錠10mg。
新たな適応が承認されれば、EUでのジャディアンスの適応に成人のCKD患者も含まれることとなり、相互に関連する心腎代謝疾患の増大するリスクを管理できる道が開かれる。
EMPA-KIDNEY試験は、成人のCKD患者6,609人を特定の病因や併発疾患で絞り込むことなく、幅広く登録して実施された第3相臨床試験。ジャディアンスはCKDの成人患者の腎臓と心血管系に有意のベネフィットをもたらすことを示し、腎疾患の進行または心血管死の相対リスクをプラセボと比較して28%低減した。
同試験は、国際無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験で、CKDの進展と心血管死のリスクに対するジャディアンスの影響を評価する試験として設計された。主要評価項目は、心血管死またはCKDの進展[末期腎不全(透析や腎移植などの腎代替療法の必要性)、eGFRの10mL/min/1.73m²未満への持続的な低下、腎死、eGFRの無作為化時点からの40%以上の持続的な低下]のどちらかが生じるまでの期間。主な副次評価項目は、心血管死または心不全による入院、すべての入院、および全死亡。CKDの診断が確立した成人患者が糖尿病の有無やアルブミン尿の有無を問わず参加し、標準治療に加えてエンパグリフロジン10mgまたはプラセボの投与を受けた。
心腎代謝系は相互に関連しており、病気にかかわる同じリスク因子と病理学的経路の多くを共有している。1つの系で機能不全が起こると、他の系統での発症が加速され、2型糖尿病、心血管疾患、心不全、腎臓病などの相互に関連した病気が進行し、ひいては心血管死のリスク上昇につながる。反対に、1つの系の健康状態を改善すれば、他の系にも好影響を与えるとみられている。
EU全体ではCKDの患者数は4,700万人以上に及び、これをさらに上回る数の人々が心腎代謝疾患を発症しており、CKD、2型糖尿病、心不全などの心腎代謝疾患は、欧州では死因第1位になっている。
英オックスフォード大学公衆衛生学医療研究協議会ポピュレーションヘルス研究ユニットのクリニカル・サイエンティストで、EMPA-KIDNEY試験の共同試験責任医師であるWilliam Herrington教授は、次のように述べている。
「CHMPの見解の根拠とされたEMPA-KIDNEY試験は、慢性腎臓病の成人患者を幅広く対象とし、腎臓病の進行と心血管死に明らかなベネフィットを示しました」。
また、共同試験責任医師であるRichard Haynes教授は、次のように述べている。
「ジャディアンスが慢性腎臓病の治療薬として承認されれば、これらの重要な知見を臨床現場でCKD患者に大いに役立てることができるでしょう」。
Summary of opinion: Jardiance (欧州医薬品庁)
Empagliflozin in Patients With CKD (米国腎臓学会)
Empagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease (New England Journal of Medicine 2023年1月12日)
Global, regional, and national burden of chronic kidney disease, 1990–2017: a systematic analysis for the Global Burden of Disease Study 2017 (Lancet 2020年2月13日)
ジャディアンス錠10mg ジャディアンス錠25mg 添付文書 (医薬品医療機器総合機構)