脳卒中後の血糖高値が認知機能低下速度と関連
Levine氏らの研究は、米国で1971~2019年に行われた4件のコホート研究のデータを統合して解析するという手法で実施された。脳卒中発症前に認知症がなく、解析に必要なデータが記録されている982人〔年齢中央値74.6歳(四分位範囲69.1~79.8)、女性48.9%、糖尿病20.9%〕を中央値4.7年追跡。脳卒中後に行われた検査での空腹時血糖値、収縮期血圧、LDL-Cの累積平均値を算出。主要評価項目として総合的な認知機能の変化との関連、副次的評価項目として実行機能と記憶力の変化との関連を検討した。
結果に影響を及ぼし得る因子〔年齢、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、腎機能、心疾患の既往、遺伝的背景(ApoE4)、教育歴、収入など〕を調整後の全体解析では、総合的な認知機能のスコアが1年につき-0.52ポイント(95%信頼区間-0.75~-0.30)の速度で低下していた。また、女性〔-0.29ポイント(同-0.51~-0.06)〕、および脳卒中発症時の年齢〔10歳高齢であるごとに-0.20ポイント(-0.32~-0.08)〕は、認知機能の低下速度と有意な関連が認められた。
検査指標の累積平均値と総合的な認知機能の低下速度との関連については、収縮期血圧〔10mmHg高いごとに0.04ポイント(-0.03~0.11)〕や、LDL-C〔10mg/dL高いごとに0.008ポイント(-0.03~0.04)〕は有意性が認められなかった。それに対して空腹時血糖値については、累積平均値が10mg/dL高いごとに、1年間に-0.04ポイント(-0.08~-0.001)、より速く総合的な認知機能が低下するという有意な関連が認められた。
実行機能や記憶力との関連については、全体解析では経時的な低下が認められたが〔実行機能は1年につき-0.50ポイント(-0.76~-0.24)、記憶力は同-0.30ポイント(-0.56~-0.03)〕、脳卒中発症年齢および前記の各検査指標との関連は非有意だった。
著者らは、「われわれの研究結果は、脳卒中サバイバーでは血糖値の累積平均値が高いことが、認知機能低下を促す可能性を示唆している。脳卒中後の高血糖への介入が、認知機能を維持するための潜在的な治療目標と言えるのではないか」と述べている。ただし、一方で「治療介入により生じ得る低血糖も、認知機能低下のリスク因子であることへの留意も必要」としている。
なお、数人の著者が、米国立老化研究所(NIA)ほか複数の組織から、金銭的サポートを受けたことを明らかにしている。
[HealthDay News 2023年5月26日]
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