急性脳梗塞患者の多くが未診断のリスク因子を有している

2022.07.11
 脳梗塞を新規発症した患者の多くが、発症以前には診断されていなかった血管イベントリスク因子を有しているとする研究結果が報告された。ヴォー州立大学病院(スイス)のAndré Rêgo氏らが、欧州神経学会(EAN2022、6月25~28日、オーストリア・ウィーン)で発表した。未診断のリスク因子として認められた頻度の高いものとして、脂質異常症、高血圧、心房細動などが該当するという。

 急性虚血性脳卒中(acute ischemic stroke;AIS)患者における未診断の主要血管リスクファクター(undiagnosed major vascular risk factors;UMRF)の実態はよく分かっていない。Rêgo氏らは、同院で行っているAIS関連レジストリである「ASTRAL(The Acute STroke Registry and Analysis of Lausanne)」のデータの遡及的解析を行い、この点を検討した。

 2003~2018年にASTRALレジストリに登録された患者から、データ欠落者などを除外した4,354人〔年齢中央値70歳(四分位範囲15.2)、女性44.7%〕を対象に解析。その結果、1,125人(25.8%)はAIS発症時点で血管イベントリスク因子の診断が記録されていなかった。この1,125人のうち341人(30.3%)は、AIS発症時点に施行した検査でもリスク因子が認められなかったが、3分の2以上に当たる784人(67.7%)は少なくとも1つのUMRFが発見された。

 新たに検出された血管イベントリスク因子は、脂質異常症(61.4%)、高血圧(23.7%)、心房細動(10.2%)、糖尿病(5.2%)、左室駆出率35%未満(2.0%)、冠状動脈疾患(1.0%)などだった。多変量解析によりUMRFを有することは、低年齢、非白人、卵円孔開存症、55歳未満での避妊薬の使用、55歳以上での喫煙と正の関連が認められた。一方、抗血小板薬の使用、およびBMI高値は、UMRFを有することと負の関連が認められた。

 UMRFを有する場合のAIS発症メカニズムとしては、卵円孔開存症によるものが多く、その一方でラクナ梗塞や心原性梗塞、大血管病変による梗塞、および複数の原因の共存による発症は少なかった。AIS発症後12カ月間の再発率や機能的転帰は、UMRFの有無で有意差がなかった。

 Rêgo氏は、「われわれの研究発表以前は、AIS患者に占めるUMRFを有する者の割合、患者プロファイル、発症メカニズムに関する臨床情報はほとんどなかった。本研究が今後、より強力な予防介入やモニタリングを必要とする、潜在的な脳卒中リスクのある患者の特定に役立つことを期待する」と述べている。

 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。

[HealthDay News 2022年6月30日]

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