フレイルのある高齢者は就業中に事故を起こすリスクが高い なぜ事故が増えるのか? シルバー人材センターの高齢者を調査
フレイル度が高まるにつれて高齢者の就労中の事故は増える
フレイル(生活機能が全般的に衰えた虚弱な状態)に該当する高齢者は、就業中に事故を起こす割合が高く、安全就労に関する研修会に参加したり、安全就労に関するチラシなどを見る機会も少ない実態が明らかになった。
事故の中身について調べてみると、フレイルに該当する高齢就業者は、転倒関連事故(転倒、転落、墜落)が多い傾向があることも分かった。
高齢就労者数が増加の一途をたどっているなか、就業中の事故が課題となっている。フレイル度が高まるにつれて就労中の事故が多くなるため、職場では安全就業のための研修を実施したり、啓発用のチラシを作成したりといった、事故を減らすための取り組みが実施されている。
しかし、そうした事故を起こしやすい層ほど、安全就業について学ぶ機会を活用できていないという実態が浮き彫りになった。
一方で、転倒や転落の可能性が低い就業内容であれば、フレイルのある高齢者でも比較的事故を起こしにくいことも示唆された。
調査は、東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典副所長らの研究グループが、東京都シルバー人材センター連合の協力のもと実施したもの。研究成果は、「Geriatrics and Gerontology International」に掲載された。
事故の経験はフレイル予備群で1.6倍 フレイルで2.3倍に増加
研究グループは今回、東京都内のシルバー人材センター(区部3センター、区外4センター)に登録している7,265人の高齢者から得られたデータを、フレイルに着目して分析した。
その結果、9.4%が過去1年間に事故を経験していた。フレイルではない人に比べて、プレフレイル(フレイル予備群)、フレイルの人は事故の経験を有することが多く、すべての事故でみた場合、プレフレイルの人で1.57倍、フレイルの人で2.31倍、事故を多く経験していた。
また、事故の種類別に分けて分析したところ、フレイルではない人と比べ、転倒・転落・墜落に関する事故の経験は、プレフレイルで1.92倍、フレイルで3.1倍に上昇した。
一方、物損事故などのそれ以外の事故の経験については、プレフレイルで1.13倍(有意差なし)、フレイルで1.61倍と、フレイルではない人との差が比較的小さい傾向も示された。
さらに、フレイルではない人に比べて、プレフレイル、フレイルの人は安全就業について学ぶ機会を活用していないことが明らかになった。
フレイル度が高まるにつれて就労中の事故が多くなる フレイルと安全就業に関する取組みについて学ぶ機会の未活用
事故を起こしやすいフレイルのある高齢者は、安全就業について学ぶ機会を活用できていない
地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所
Associations between frailty status, work-related accidents and efforts for safe work among older workers in Tokyo: A cross-sectional study (Geriatrics & Gerontology International 2023年2月6日)