CGMが2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善 低血糖も減少 CGMは2型糖尿病にも有用

2021.08.11
 持続血糖モニター(CGM)が、2型糖尿病患者の血糖コントロールを改善することが、米国の2件の研究で明らかになった。
 CGMを利用することで、HbA1cが改善し、低血糖リスクも低下することが確かめられた。すでにCGMの有用性が確認されている1型糖尿病患者だけでなく、2型糖尿病患者でも有用であることが示された。
 両研究ともにDexcom社のCGMシステムが使用されている。

CGMがHbA1cを改善し低血糖を減少

 持続血糖モニター(CGM)を利用することで、HbA1cが改善し、低血糖による救急受診が減少するという研究を、米国の大手の医療・保険機関であるが発表した。研究は、Dexcom社と国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)の支援を受けており、研究成果は「JAMA」に掲載された。

 研究は、インスリン治療を行っている1型糖尿病5,673人と2型糖尿病3万6,080人が参加した、後ろ向き効果比較コホート研究として行われた。うち3,806人(平均年齢42.4±19.9歳、女性51%、1型糖尿病91%、2型糖尿病9%)が、2015~2019年に新たにリアルタイムCGMの使用を開始していた。一方、3万7,947人(平均年齢63.4±13.4歳、女性49%、1型糖尿病6%、2型糖尿病94%)は従来の手法による血糖モニタリングを行った。

 ベースライン前の12ヵ月から後の12ヵ月の間に生じた、平均HbA1cや低血糖または高血糖による救急部門の受診・入院頻度など10項目の変化を、リアルタイムCGM開始群と従来療法群で比較した。

 その結果、HbA1cはリアルタイムCGM開始群が8.17%から7.76%に低下したのに対し、従来療法群は8.28%から8.19%と変わらなかった(調整後の推定値の差-0.40%、95%CI-0.48~-0.32、P<0.001)。

 また低血糖による救急部門の受診や入院は、リアルタイムCGM開始群では5.1%から3.0%に低下したのに対し、従来療法群では1.9%から2.3%に増加した(同-2.7%、95%CI-4.4~-1.1、P=0.001)。HbA1cが7%未満を達成した患者の割合も有意差がついた(同9.6%、95%CI7.1~12.2、P<0.001)

CGMは2型糖尿病患者にも有用

 「今回の研究では、CGMは1型糖尿病患者だけでなく、2型糖尿病患者にも有用であることが分かりました。CGMが低血糖を防ぎながら、血糖値を目標に近づけさせるのに有利であることが示されました」と、カイザーパーマネンテの内分泌代謝科医であるRichard Dlott氏は言う。

 現状では、CGMはすべての糖尿病患者が利用できるものではなく、米国の医療保険であるメディケアでは、毎日3回以上のインスリン注射を行っているかインスリンポンプを使用しており、1日4回以上の血糖値自己測定を行い、3~6ヵ月ごとに糖尿病の医療チームと連絡をとれる状態にあるなどの条件がある。

 「研究を担当した医師の多くは、低血糖の病歴があるか、そのリスクが高い2型糖尿病患者を優先して、CGMの処方をしました。こうした患者で、CGMにはベネフィトがあるようです」と、カイザーパーマネンテの上級研究で米国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所(NIDDK)が支援する糖尿病デリバリーシステム・トランスレーション研究センターのディレクターでもあるAndrew J. Karter氏は言う。

 「最新のテクノロジーがすべての患者にとって常に優れているとは限りませんが、どのような患者がCGMの恩恵を受けられる可能性があるかを、今後の研究で特定できるようにする必要があります」としている。

CGMはより多くの患者の糖尿病管理を向上できる可能性が

 ミシガン大学医学部も、持続血糖モニター(CGM)が、2型糖尿病の血糖コントロールを改善し、低血糖リスクを減らすのに有用という研究を発表した。研究成果は「JAMA」に掲載された。

 米国内の15施設で実施されたこのランダム化比較試験は、2018年7月~2019年10月に患者登録が開始され、2020年7月までフォローアップされた。2型糖尿病患者175例が登録され、経口血糖降下薬の有無に関わらず、全員が持効型溶解インスリンの毎日1~2回注射による基礎インスリン療法を行っていた。年齢は57歳(中央値)、女性が50%、ベースラインのHbA1c値は9.1%だった。

 CGM群と従来のSMBG群に2対1に無作為に振り分け(CGM群は116例、SMBG群は59例)、うち165例(94%)が試験を完了した。

 その結果、8ヵ月に介入により、CGM群ではHbA1c値は9.1%から8.0%に改善したのに対し、SMBG群では9.0%から8.4%にとどまった(調整後の推定値の差-0.4%、95%CI-0.8~0.1%、P=0.02)。

 血糖コントロールのターゲットとなる70~180mg/dL範囲におさまった時間は、CGM群で59%、SMBG群で43%だった(同15%、95%CI8%~23%、P<0.001)。血糖値が250mg/dL以上だった時間は、CGM群で11%、SMBG群で27%だった(同-16%、95%CI-21%~-11%、P<0.001)。重篤な低血糖事象の発生は、CGM群で1%、SMBG群で2%だった

 CGMを使用した群では、治療に対する遵守度が高く、生活満足度もより高かった。「すべての患者がプライマリケアチームにより指導を受けた。内分泌代謝医とプライマリケア医のパートナーシップがなければ、今回の仕事は不可能だっただろう」と、ミシガン大学医学部内科のRodica Busui氏は述べている。

 「より多くの糖尿病患者が、この画期的なテクノロジーを幅広く利用できるようにするのが望まれる。主治医がCGMを利用するメリットについて適切な患者教育をできるようになれば、より多くの患者の糖尿病管理を向上できる可能性がある」としている。

Continuous glucose monitors help manage type 2 diabetes(カイザーパーマネンテ 2021年6月2日)
Association of Real-time Continuous Glucose Monitoring With Glycemic Control and Acute Metabolic Events Among Patients With Insulin-Treated Diabetes(Journal of the American Medical Association 2021年6月2日)
No more finger pricks: a continuous glucose monitor benefits patients with diabetes in more ways than one(ミシガン大学 2021年7月20日)
Effect of Continuous Glucose Monitoring on Glycemic Control in Patients With Type 2 Diabetes Treated With Basal Insulin: A Randomized Clinical Trial(Journal of the American Medical Association 2021年6月2日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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