【新型コロナ】パンデミック中に小児1型糖尿病の新規発症が増加
この研究は、サンディエゴ地方の三次医療機関であるレイディ小児病院の電子カルテを遡及的に解析するという手法で行われた。同院は同地域で唯一の小児病院であり、インスリン導入を要する、ほぼ全ての糖尿病患児の初期治療を担っている。
カリフォルニア州で外出禁止令が発令された以降の2020年3月19日~翌2021年3月18日までをCOVID-19パンデミック期間と定義。この間に1型糖尿病と診断された患児数を、2015年3月19日~2020年3月18日の5年間のデータから予測される発症患児数と比較した。
パンデミック期間に1型糖尿病と診断され入院治療を受けた患児数は187人(平均年齢9.6±4.2歳、女児が56.7%)だった。それに対して、前年の同期間の新規発症入院患児は119人であり、パンデミック以降に57%増加したことが明らかになった。
1型糖尿病の発症には季節変動が存在する可能性が指摘されていることから、過去5年間のデータを基に発症件数の四半期移動平均を算出。すると、パンデミック以降、予測値の95%信頼区間上限を上回る発症が確認された。例えば、2020年7月の発症予測値は10人(95%信頼区間6.79~13.89)であるのに対して、実際には15人が発症していた。また2021年2月には予測値が10人(同6.88~13.54)に対して、21人が発症していた。
パンデミック中に発症した患児187人のうち、93人(49.7%)はDKAを呈していて治療にインスリン静注を要した。この割合は、過去5年間の641人中261人(40.7%)より有意に高かった(P=0.01)。一方、発症時の年齢(パンデミック期間が9.6±4.2歳で過去5年間の平均が9.7±4.2歳、P=0.82)、BMIのZスコア(同順に-0.39±1.78対-0.43±1.61、P=0.72)、HbA1c(11.6±1.8対11.7±1.9%、P=0.52)、小児集中治療室への入室(8.6対6.4%、P=0.39)に関しては有意差がなかった。なお、パンデミック期間に新規発症した187人のうち、1型糖尿病の症状発現時点でCOVID-19に罹患していたのは4人(2.1%)のみだった。
これらより論文の結論は、「COVID-19パンデミック中に診断された1型糖尿病の新規発症件数は、パンデミック前の5年間のデータからの予測値よりも多かった」とまとめられている。著者らによると、これまでにもCOVID-19パンデミックに伴い小児1型糖尿病の発症が増加しているとする報告があるが、それを否定する研究もあり、一貫性が見られないという。その理由について、検討対象期間が短期間に限られていたり、季節性が考慮されていなかったためではないかとの考察を述べている。
[HealthDay News 2021年2月4日]
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