ホタルイカの光を糖尿病腎症の早期診断に利用 尿中アルブミンの定量に成功 富山大学

2022.08.29
 糖尿病性腎症を早期診断するために、尿中アルブミンの測定が不可欠だが、富山大学は尿中アルブミンを定量する新たな方法を発見したと発表した。

 ホタルイカの発光に必要なルシフェリンという化合物が、アルブミンと結合して発光する現象を利用したもの。尿中タンパク質の精製法や反応条件を最適化し、ホタルイカルシフェリンを用いて尿中アルブミンを定量することに成功した。

ホタルイカの光で尿中アルブミンを定量

 ホタルイカは富山湾を代表するイカで、発光の美しさから「ホタルイカ群雄海面」として特別天然記念物に指定されている。その発光メカニズムはホタルイカがもつルシフェラーゼというタンパク質と、ルシフェリンという低分子が反応すること。

 研究グループは今回、ホタルイカルシフェリンが、ヒトアルブミンと特異的に反応し、発光する現象を発見した。さらに、この反応の発光強度は、アルブミンの濃度と非常に広い範囲で比例関係を有することも確認した。また、この発光がホタルイカの本来の青色光ではなく、緑色の発光であることも分かった。

 この反応を、尿中のアルブミン濃度計測に応用することを試みたところ、尿中タンパク質をアセトンで沈殿させるという工程を経ることで、アルブミンの定量が可能であることを明らかにした。

 この反応はTris緩衝液中で非常に広い範囲で比例関係を示すことも分かった。これは、発光強度を計測すれば、溶液中のアルブミンの濃度を計測できることを示している。

 研究グループは当初、この発光現象を尿中アルブミンの濃度測定に利用しようと試みたが、尿中の夾雑物が反応を阻害することが分かり、その問題を解決することが必要となった。

 そして、尿中のタンパク質を沈殿させることで夾雑物を除去できるのではないかと考え、数種類の尿中タンパク質沈殿法を試した。その結果、アセトンを用いたタンパク質沈殿法を用いて尿中タンパク質を沈殿させた場合、アルブミン定量が可能であることが分かった。

 得られた定量データを、抗体を用いたアルブミン濃度計測法と比べた結果、両者の相関が高いことがわかり、従来法に比べて遜色のない定量法であることが分かった。

ホタルイカの光で尿中アルブミンを定量
出典:富山大学、2022年

 研究グループは今後、尿中のタンパク質の精製方法の簡便化が不可欠であることから、アセトン沈殿以外の方法で尿中タンパク質の精製ができないか探るとしている。

 また、ホタルイカルシフェリンを改変し、より発光の強い分子を合成することで、感度を向上させることも可能としている。

 「ルシフェリンとアルブミンが反応するということの、生物学的意義は今のところ分かりません。ルシフェリンとアルブミンの反応がホタルイカ体内でも起きているのかについても調査を進めたい」と、研究グループでは述べている。

 研究は、富山大学学術研究部医学系分子神経科学講座および同大学アイドリング脳研究センターの石本哲也助教らによるもの。研究成果は、「International Journal of Molecular Sciences」に掲載された。

富山大学学術研究部医学系分子神経科学講座
富山大学 アイドリング脳科学研究センター
A New Method for Albuminuria Measurement Using a Specific Reaction between Albumin and the Luciferin of the Firefly Squid Watasenia scintillans (International Journal of Molecular Sciences 2022年7月28日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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