糖尿病管理は「チーム医療+臨床意思決定支援システム(CDSS)」でより向上する

2022.12.22
チーム医療+臨床意思決定支援システムで糖尿病管理がより向上

 糖尿病ケアにおけるチーム医療に際し、標準化された治療アルゴリズムに沿って治療の方向性を提案する「臨床意思決定支援システム(clinical decision support system;CDSS)」を用いることで、心血管疾患リスク因子をより良好に管理できるとする研究結果が報告された。厦門大学第一附属病院(中国)のXiulin Shi氏らの研究によるもので、詳細は「Annals of Internal Medicine」に12月6日掲載された。

 糖尿病治療においてチーム医療が重要であることは論をまたないが、質の高いチーム医療には、チームに加わる各医療職者に高いスキルが求められる。個々のスタッフは、糖尿病患者の治療に必要とされる高度な専門知識と技術を常に習得し続ける必要があり、全ての医療機関が必ずしも高品質のチーム医療を提供できるとは限らない。

 このような状況に対して海外では、最新の疾患ガイドラインや診療データから構築されたアルゴリズムにもとづき治療法を提案する「CDSS」を、糖尿病チーム医療に採用する動きが広がっており、とくに専門医が不足している低中所得国などで効果が期待されている。Shi氏らの研究は、このCDSSの利用が、糖尿病チーム医療を受ける患者の臨床指標に変化をもたらしえるか否かを検討したもの。

 この研究は、厦門地域の38の医療機関が参加し、クラスター無作為化比較試験として実施された。すべての研究参加医療機関において、プライマリケア医とスタッフから成る糖尿病チーム医療を提供。そのうえで19の医療機関では、ガイドラインに即して患者ごとに個別化された治療推奨事項を提案するCDSSが利用された。

 解析対象は、併存疾患を有する50歳以上の糖尿病患者1万1,132人であり、このうち5,657人はCDSSを用いないチーム医療を受け、5,475人はCDSSを利用したチーム医療を受けた。主要評価項目は、介入18ヵ月でのHbA1c、LDL-C、収縮期血圧(SBP)の変化と、それらの3指標が全て管理目標に達した患者の割合。なお、管理目標は2018年の米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインに準拠した。

 ベースライン時点の患者背景は、有意な群間差がなかった。例えば年齢は、チーム医療のみの群63.0±7.3歳、CDSS併用群62.6±6.7歳、女性の割合は同順に54.0%、56.0%、HbA1cは8.7±1.5%、8.8±1.6%。また、医療機関1施設当たりの患者数、プライマリケア数、医療スタッフ数、プライマリケア医の年齢・性別なども有意差がなかった。

 18ヵ月の介入で両群ともにHbA1c、LDL-C、SBPが有意に低下したが、低下幅はCDSS併用群の方が有意に大きかった(P<0.001)。詳細は以下の通り。
 HbA1cはチーム医療のみの群-0.6%(95%信頼区間-0.7~-0.5)、CDSS併用群は-0.9%(同-0.9~-0.8)、LDL-Cは同順に-12.5mg/dL(-13.6~-11.3)、-19.0mg/dL(-20.4~-17.5)、SBPは-7.5mmHg(-8.4~-6.6)、-9.1mmHg(-9.9~-8.3)。

 また、3指標が全て管理目標に達した患者の割合は、チーム医療のみの群が13.0%(11.7~14.3)、CDSS併用群16.9%(15.7~18.2)であり、後者の方が有意に高値だった(P<0.001)。

 この結果をもとに著者らは、「糖尿病患者の心血管疾患リスクを抑制するうえで、中国やその他の低中所得国におけるプライマリケア環境などでのCDSS採用が支持される」と述べている。

[HealthDay News 2022年12月6日]

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