前糖尿病状態の6%が1年以内に糖尿病に移行
米国の一般人口における2018年の糖尿病発症率は、成人1,000人当たり6.7人と報告されている。この発症率は2000年以降、大きな変化が現れていない。つまり、前糖尿病状態から糖尿病への移行を抑制するための、エビデンスにもとづく公衆衛生戦略が奏功していないことを示唆している。そこでTseng氏らは、この現状を背景として、前糖尿病から糖尿病発症に至るリスク因子を特定するとともに、プライマリケアにおける糖尿病発症予防のための介入がどの程度実践されているか、実態の把握を試みた。
この研究は、電子カルテと医療費請求データベースを用いた、後ろ向きコホート研究として実施された。解析対象は、糖尿病の既往がなく、過去6カ月以内の妊娠や最近のステロイド使用歴のない、前糖尿病に該当する3,888人。平均年齢は63歳、女性が65.4%であり、白人が55.0%、黒人が34.5%だった。
解析対象の6%が、コホート登録から12カ月以内に糖尿病を発症していた。ロジスティック回帰分析の結果、前糖尿病状態から糖尿病への移行リスクの高さと有意に関連する因子として、以下の3つの因子が抽出された。
1つ目は血糖レベルであり、ベースラインのHbA1cが6.0~6.4%または空腹時血糖値が110~125mg/dLを基準とすると、それより血糖レベルが低いHbA1c5.7~5.9%または空腹時血糖値100~109mg/dLの場合、糖尿病発症オッズ比(OR)は0.98(95%信頼区間0.96~0.99)だった。2つ目の因子はBMIであり、ベースラインのBMIが1高いごとにOR1.05(同1.03~1.06)だった。残るもう1つの因子は人種で、白人を基準とすると黒人はOR1.44(同1.02~2.04)だった。
次に、前糖尿病状態の人への介入状況を見ると、コホート登録から12カ月以内に再検査が実施されていたのは63.4%にとどまっていた。そのうち医療介入が行われたのは10.4%と少数であり、メトホルミンの処方箋が発行されたのは5.4%のみ、さらに栄養サービスが紹介されていたのはわずか1.0%にすぎなかった。メトホルミンの処方箋が発行されたり栄養サービスが紹介された対象者は、その多くが実際に処方薬を受け取り、栄養指導を受けていた(12カ月以内にそれぞれ75.7%、76.3%)。
これらの結果をもとに著者らは、「前糖尿病と判定された人に対する、糖尿病発症予防のための栄養サービス紹介率、およびメトホルミン処方率を向上することが喫緊の課題である」と述べている。
[HealthDay News 2021年3月11日]
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