1型糖尿病:ハイブリッドクローズドループ(HCL)システムが血糖管理を改善 低血糖性昏睡リスクも減少
インスリンポンプとCGM、アルゴリズムを組み合わせて、インスリン投与を自動的に制御するハイブリッドクローズドループ(HCL)システムが、1型糖尿病患者の血糖管理を改善することが、約1万4,000人の1型糖尿病患者のデータの解析により明らかになった。
HCLシステムにより、HbA1cが改善し、血糖値が目標範囲に収まった時間が増え、低血糖性昏睡のリスクが減少した。その一方で、糖尿病性ケトアシドーシスの発生率は高くなった。

クローズドループと従来のオープンループを比較
HbA1c・血糖管理を改善 低血糖性昏睡も減少
インスリンポンプとCGM、アルゴリズムを組み合わせて、インスリン投与を自動的に制御するハイブリッドクローズドループ(HCL)システムが、手動で制御を行うオープンループ療法と比較して、1型糖尿病患者の血糖管理を改善することが、約1万4,000人の1型糖尿病患者のデータの解析により明らかになった。
研究は、ドイツのアーヘン工科大学 医学部 内分泌学・糖尿病部門のBeate Karges教授らによるもので、ドイツ糖尿病研究センターDZD(Deutsches Zentrum fuer Diabetesforschung DZD)が発表した。研究成果は、「Lancet Diabetes & Endocrinology」に掲載された。
研究グループ今回、糖尿病前向き追跡調査(DPV)イニシアチブによるコホート研究に参加した、ドイツ、オーストリア、スイス、ルクセンブルクの250の糖尿病センターの1型糖尿病患者を対象に評価した。
参加した1万3,922人の患者の年齢は2〜20歳、男性が51%、1型糖尿病の罹病期間が1年以上で、2021年1月1日~2023年12月31日に治療を受けていた。7,088人がハイブリッドクローズドループを使用し、6,834人が従来のインスリンポンプを使用するオープンループシステムを使用した。観察期間の中央値は1.6年だった。
主要評価項目を、クローズドループ療法と、オープンループ療法を比較した、重度の低血糖とケトアシドーシスの発症率とし、主な副次評価項目を、HbA1c、血糖値が70~180mg/dLの目標範囲に収まった時間、血糖変動差とした。
その結果、低血糖性昏睡の発症率は、クローズドループ群では100患者年あたり0.62で、オープンループ群の0.91よりも有意に低下した[発症率比 0.68、95%CI 0.48~0.97、p=0.034]。
HbA1cは、クローズドループ群では7.34%、オープンループ群では7.50%となり、有意に低下した[差 マイナス0.16%、95%CI マイナス0.20~マイナス0.13、p=0.0007]。
血糖値が目標範囲に収まった時間は、クローズドループ群では64%、オープンループ群では52%となり、有意に増加した[差 12%、95%CI 10~14%、p<0.0001]。
クローズドループ群では血糖変動も少なかった[変動係数 35.4% 対 38.3%、差 マイナス2.9%、95%CI マイナス3.3~マイナス2.5%、p<0.0001]。重度の低血糖の発症率には有意差がなかった。
ケトアシドーシスの発症率はHCLで増加 原因は?
一方で、ケトアシドーシスの発症率は、クローズドループ群の方が、オープンループ群と比較して多かった[1.74件 対 0.96件、発症率比 1.81、95%CI 1.37〜2.40、p<0.0001]。
とくにHbA1cが8.5%以上の若年患者で、ケトアシドーシスの発症率はクローズドループ群で大幅に高かった[5.25件 対 1.53人、発症率比 3.43、95%CI 1.69~6.97、p<0.0001]。
高血糖性の昏睡である糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)は通常は、インスリンが不足した状態で起こる。
なぜハイブリッドクローズドループ(HCL)システムの使用により、ケトアシドーシスのリスクが増加したのかについて、原因の特定はできないものの、「使用している患者によるシステムの誤操作やミスなどによる、不十分なインスリン投与によって引き起こされた可能性がある」と、研究者は指摘している。
「根本的なメカニズムを明らかにし、患者教育の追加や、継続的なケトン体などの測定、さらにはHCLによるインスリン投与のアルゴリズムの技術的進歩により、これらの患者のケトアシドーシスを予防できるようにすることが望まれる」としている。
Type 1 Diabetes: Hybrid Closed-Loop and Open-Loop Systems Compared (ドイツ糖尿病研究センターDZD 2025年2月11日)
Hybrid closed-loop insulin therapy and risk of severe hypoglycaemia and diabetic ketoacidosis in young people (aged 2–20 years) with type 1 diabetes: a population-based study (Lancet Diabetes and Endocrinology 2025年2月)