食事時にワインを飲むと2型糖尿病リスクは低下 食事しないで飲んだりビールを飲むとリスクは上昇
食事時にアルコールを摂取すると2型糖尿病リスクは低下
食事時にワインなどのアルコール飲料を飲むと、2型糖尿病の発症リスクが低下する可能性があるという調査結果を、米チューレーン大学公衆衛生熱帯医学部が発表した。
研究成果は、2022年3月に開催された米国心臓学会(AHA)疫学・予防・ライフスタイル・心臓代謝会議2022で発表された後に、「American Journal of Clinical Nutrition」に2022年12月に掲載された。
英国バイオバンクに参加した31万2,388人成人を対象に、アルコールを飲む習慣と2型糖尿病リスクについて、平均10.9年追跡して調査した研究にもとづくもの。期間中に8,598人が2型糖尿病を発症した
その結果、食事時にアルコールを摂取すると、食事をしないでアルコールを摂取する場合に比べ、2型糖尿病のリスクは12%低下することが示された(HR 0.88、95% CI 0.83~0.93)。
適度な飲酒による、2型糖尿病リスクに対する潜在的なベネフィットは、食事中にアルコールを飲んだ人々でのみ示され、食事に対するアルコール摂取のタイミングにより、その関連は大幅に変化した(P相互作用=0.017)。
食事時のアルコール摂取と2型糖尿病との有益な関連を、アルコール飲料の種類によって比較したところ、ワインを飲んでいた人でもっとも強くみられ、ビールやリキュールを飲んでいた人では、飲酒量が多いほど2型糖尿病のリスクはむしろ高くなった。
なお、アルコールの週の総摂取量の中央値は、食事時に飲んでいた人で89.6g(12.8~422.4g)、食事をしないで飲んでいた人で129.6g(15.2~728.0g)、まちまちという人で129.6g(20.0~598.4g)。いずれも半数以上が週に3回以上飲んでいた。
さらに、食事時にワインを飲んでいた人は78.3±27.5%、食事をしないでワインを飲んでいた人は29.5±37.4%。食事時にビールを飲んでいた人は15.4±25.0%。食事をしないでビールを飲んでいた人は54.0±41.8%だった。
アルコール摂取の健康への影響は諸刃の剣
「アルコール摂取の健康への影響についてこれまで、諸刃の剣として理解されてきた。飲酒の仕方により、有害あるいは有益のいずれかの方向に強く傾く可能性がある」と、同大学肥満研究センターおよび個別化健康研究所のHao Ma氏は述べている。
「過去の研究で多く扱われたのは飲酒量についてだが、アルコール摂取のタイミングなどの要因にも焦点を当てる必要がある」としている。
米国の食事ガイドイランでは、適度な飲酒はワインである、男性は1日グラス2杯(約300mL、純アルコールで28g)まで、女性はグラス1杯(約150mL、同14g)とされている。
過去の臨床試験では適度な飲酒が、グルコース代謝などの健康上のベネフィットをもたらす可能性が示されていたが、これが2型糖尿病発症の減少につながるかどうかは不明だった。
そこで研究グループは今回、アルコール摂取と2型糖尿病のリスクとの関連が、食事に関するアルコール摂取のタイミングによって異なるかどうかを調査した。
この研究の限界としては、参加者のほとんどがヨーロッパ系白人の成人であり、飲酒習慣については自己申告にもとづくものであり、調査結果が他の集団に一般化できるかどうかは不明としている。
研究は、米国国立衛生研究所(NIH)の米国国立心臓・肺・血液研究所(NHLBI)および米国国立糖尿病・消化器・腎疾患研究所(NIDDK)による資金提供を受けて行われた。
Study finds drinking wine with meals may lower the risk of type 2 diabetes (チューレーン大学 2022年3月8日)
Moderate alcohol drinking with meals is related to lower incidence of type 2 diabetes (American Journal of Clinical Nutrition 2022年10月17日)