血糖管理不良の糖尿病は心不全への進行リスクが高い――ARIC研究
糖尿病は心不全のリスク因子とされているが、前臨床段階の無症候性心不全が症候性心不全へと進行する過程に、糖尿病の存在がどの程度影響を及ぼすのかはよく分かっていない。Echouffo-Tcheugui氏らは、アテローム性動脈硬化症の原因追究のための大規模臨床試験「ARIC(Atherosclerosis Risk In Communities)研究」の第5集団(2011~2013年に研究参加登録)のデータを用いて、この点の検討を行った。
ARIC研究の第5集団には、心不全ステージA(心不全症状や器質的心疾患はないがリスク因子を有する状態)が1,551人、ステージB〔心不全症状はないが器質的心疾患(NT-proBNP125pg/mL以上、または、高感度トロポニンTが女性は14ng/L超、男性は22ng/L超などで定義)のある状態〕が3,223人含まれていた。合計4,774人で、平均年齢は75.4歳、女性が58%、黒人20%。ステージA・Bの各群を、糖尿病の有無および糖尿病を有する場合はHbA1c7%未満/以上に群分けし、心不全発症との関連を解析した。
8.6年の追跡期間中に470件の心不全イベントが発生した。ステージBでHbA1c7%以上の糖尿病群は、HbA1c7%未満の糖尿病群または非糖尿病群に比較し、より若年で症候性心不全へ進行していた(心不全イベント発生時の平均年齢がそれぞれ、80歳、83歳、82歳でP<0.001)。また、HbA1c7%以上であることは、ステージA〔ハザード比(HR)1.52(95%信頼区間0.53~4.38)〕では心不全進行リスクとの関連が有意でなく、ステージB〔HR1.83(同1.33~2.51)〕では有意な関連が見られた。ステージBでHbA1c7%以上の群は、ステージAの非糖尿病群に比較して、症候性心不全リスクが7倍以上高かった〔HR7.56(同4.68~12.20)〕。
以上より論文の結論は、「前臨床段階の心不全ステージにある高齢者では、十分に管理されていない糖尿病が症候性心不全への進行リスクと関連していた。この研究結果は、心不全進行プロセスの早い段階で、糖尿病を標的とした治療が重要であることを示唆している」とまとめられている。またEchouffo-Tcheugui氏は、「糖尿病と心不全はどちらも極めて有病率が高い。両者は互いに強く関連していると考えられていたが、この研究はその関連を初めて明確に示したものだ。われわれはこの点を今後も引き続き探っていきたい」と述べている。
なお、一部の著者が製薬・医療関連企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。
[HealthDay News 2022年6月22日]
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