糖尿病発症予防プログラム(NDPP)は医療費削減につながる 2年間の直接医療費削減の確率は88%
米疾病対策センター(CDC)が行っている前糖尿病者対象の糖尿病発症予防プログラムが、医療費削減にもつながっている可能性が高いとする論文が「Diabetes Care」に11月20日掲載された。米ミシガン大学アナーバー校のShihchen Kuo氏らの研究によるもの。
2000年代初頭に報告されたDPP(Diabetes Prevention Program)により、前糖尿病者に対する強力なライフスタイル介入が糖尿病への移行を抑制し、その費用対効果も優れていることが示された。この知見をもとにCDCは、全米規模の糖尿病発症予防プログラム(National Diabetes Prevention Program;NDPP)を開始。
メディケア受給者は医療費自己負担なしでNDPPに参加可能とするなど、米国は現在、前糖尿病から糖尿病への移行抑止に国家レベルで注力している。Kuo氏らは今回、このNDPPの費用対効果を詳細に検討した。
NDPPに参加した575人と非参加の前糖尿病者5,373人の医療費請求データを用い、差分解析を実施。NDPP登録前年から登録2年後までの直接医療費の差を算出した。また医療費のほかに、ベースラインおよび1年後と2年後の生活の質(Euro Qol 5-Dimension 5-level questionnaire〔EQ-5D-5L〕スコア)、および質調整生存年(Quality-Adjusted Life-Year;QALY)を評価した。
解析の結果、NDPP参加群の2年間の直接医療費総額はNDPP非参加群に比べて、1人平均4,552ドル(95%信頼区間-1万3,231~2,014)低かった。この医療費低下には主に、入院(-3,011ドル〔同-1万658~1,619〕)、外来(-1,219ドル〔-4,571~1,873〕)、救急治療室(ER)利用(-319ドル〔-820~110〕)でのコスト減少が関連していた。EQ-5D-5LスコアやQALYには顕著な差がなかった。
不確実性分析から、NDPP参加後2年間で直接医療費削減につながる確率は88%であり、1QALY当たりの医療費が10万ドル未満になる確率は84%と計算された。なお、米国では1QALY当たりの医療費が10万ドル未満であれば、費用対効果の高い介入と見なすことが多い。
このほかに、2年間での糖尿病発症率はNDPP参加群が5.09%、非参加群は7.85%であり、絶対リスク差は-2.77%(-4.87~-0.49)と有意だった。前糖尿病から糖尿病への移行を1人減らすために必要な介入人数(number needed to treat;NNT)は、約36人と計算された。
著者らは、「より大規模なサンプル数でより長期間追跡すれば、NDPP介入が米国内の数百万に上る前糖尿病者のQALYを向上し、医療費削減につながる可能性がある」と述べている。
[HealthDay News 2025年1月7日]
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