SGLT2阻害薬を使用している糖尿病合併の心不全患者で死亡・再入院リスクが低下 DPP-4阻害薬と比較

2022.08.25
 国立循環器病研究センターなどは、糖尿病を合併した心不全患者を対象とした調査で、SGLT2阻害薬の使用は、DPP-4阻害薬の使用と比べて、良好な予後と関連することを明らかにした。

 厚生労働省が保有するレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を用いて、4,176病院の30万398人を対象に解析した。

SGLT2阻害薬投与集団は死亡リスクが30%減少
心不全再入院リスクも48%減少
リアルワールド診療データ解析で明らかに

 糖尿病治療薬のひとつであるSGLT2阻害薬が、心不全治療において有効だという多くの結果が報告されているが、日本の糖尿病合併心不全患者でのリアルワールドデータ、さらには超高齢者への有効性が示されている報告は少ない。

 そこで国立循環器病研究センターなどの研究グループは、日本最大のリアルワールド診療データであるレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)データを用いて、SGLT2阻害薬処方と1年予後との関連を調べ、日本の糖尿病患者によく使用されるDPP-4阻害薬との比較を行った。

 2014年度~2018年度の5年間に、急性心不全入院患者をNDBデータベースより抽出。うち急性冠症候群が合併している患者・院内死亡した患者・退院時処方に心不全治療薬を1つも投与されていない患者を除外し、4,176病院30万398人を解析対象とした。アウトカムについては、1年以内の総死亡、再入院、および心不全再入院とした。

 急性心不全初回入院患者で、71.9%(21万6,016人)が75歳以上であり、糖尿病合併患者は32.5%(97,682人)だった。SGLT2阻害薬投与群はDPP-4阻害薬投与群に比べて、年齢が若く、心不全治療薬の服用も多い傾向にあった。

 患者背景の補正などを行った傾向スコアを用いた統計解析を行った結果、DPP-4阻害薬投与集団に比べて、SGLT2阻害薬投与集団では、死亡リスクが30%減少し、75歳以上でも32%減少したことが明らかになった。

 心不全による再入院リスクでもSGLT2阻害薬集団では48%減少し、75歳以上でも41%減少するという結果になった。

 なお、ここでは心不全治療薬とは、β遮断薬・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬をさす。

 研究は、国立循環器病研究センターのオープンイノベーションセンター情報利用促進部の中井陸運室長・岩永善高部長と、奈良県立医科大学・大阪大学の研究チームによるもの。研究成果は、オープンアクセス査読付き科学雑誌「Cardiovascular Diabetology」に早期オンライン掲載された。

 「超高齢者化社会である我が国のリアルワールド診療データベースで、糖尿病合併心不全患者ではSGLT2阻害薬の使用はDPP-4阻害薬に比べて、良好な予後と関連することが示されました。本研究結果は、リアルワールドエビデンスとして、今後、超高齢者の治療を含んだ幅広い医療現場の診療の向上に寄与することが期待されます」と、研究グループでは述べている。

 この研究は、厚生労働科学研究補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)「循環器病の医療体制構築に資する自治体が利活用可能な指標等を作成するための研究」、「循環器病に係る急性期から回復期・慢性期へのシームレスな医療提供体制の構築のための研究」より資金的支援を受け実施された。

国立循環器病研究センター オープンイノベーションセンター
Contemporary use of SGLT2 inhibitors in heart failure patients with diabetes mellitus: a comparison of DPP4 inhibitors in a nationwide electric health database of the superaged society (Cardiovascular Diabetology 2022年8月13日)
NDBオープンデータ (厚生労働省)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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