【新型コロナ】国産ワクチンの第2/3相試験を開始 経口治療薬の第1相試験は良好な結果に 塩野義
COVID-19治療薬「S-217622」の国内第1相試験の結果も発表。1日1回の経口投与で非臨床試験から予測されたウイルス減少効果に必要な目標血中濃度を上回ったとしている。
遺伝子組換えタンパクワクチンの国内第2/3相試験を開始
塩野義製薬は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する予防ワクチン「S-268019」について、国内第2/3相臨床試験を10月20日に開始したと発表した。
同社が開発中のワクチンは、国立感染症研究所やグループ会社のUMNファーマと開発した、昆虫細胞などを用いたタンパク発現技術であるBEVSを活用した遺伝子組換えタンパクワクチン。
遺伝子組換えタンパクワクチンは、ウイルスの遺伝子情報から目的とする抗原タンパクを発現・精製後に投与に供される。遺伝子情報そのものを投与し、体内で抗原タンパクを合成させるmRNAワクチンなどの新規技術と比べて、抗原発現や精製に一定の開発期間を要する一方で、BEVSを活用したインフルエンザ予防ワクチンをはじめ、複数の製品がその効果と安全性をもとに承認・実用化されている技術だ。
同ワクチンは、アジュバントを変更した新製剤として、2021年8月より国内第1/2相臨床試験が開始された。同試験では、日本人成人60例を対象に、忍容性、安全性および免疫原性の評価が行われており、これまでに本ワクチンの忍容性を確認するとともに、安全性についても大きな問題は認められず、さらに良好な中和抗体価の上昇を確認したことから、このほど国内での第2/3相臨床試験に移行した。
第2/3相臨床試験は、日本人成人を対象としたオープンラベル試験で、日本医療研究開発機構(AMED)の支援を受け実施する。同ワクチンを2回接種した際の安全性および免疫原性の評価を行い、臨床的有効性を検討する。また、同試験の実施と並行して、国内外での複数の臨床試験の実施に向けた準備を進めるとしている。
COVID-19治療薬「S-217622」の第1相試験結果も発表
同社は、COVID-19治療薬として開発中の経口抗ウイルス薬「S-217622」についても、非臨床試験および国内第1相臨床試験での結果を、10月に開催されたInternational Society for Influenza and Other Respiratory Virus Diseases(ISIRV)-WHO Virtual Conferenceで発表した。
S-217622は、北海道大学との共同研究から創製された3CLプロテアーゼ阻害薬。新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は3CLプロテアーゼというウイルスの増殖に必須の酵素を有しており、同剤は3CLプロテアーゼを選択的に阻害することで、SARS-CoV-2の増殖を抑制する。
SARS-CoV-2感染動物を用いた非臨床試験で、ウイルス量を速やかかつ有意に低下させることが確認されている。日本では、2021年7月から第1相臨床試験を開始しており、現在、軽症のCOVID-19患者または無症候のSARS-CoV-2感染者を対象とした第2/3相臨床試験を実施中。
ISIRVでは、2021年7月から開始した国内第1相臨床試験の結果の概要を含め、これまで非臨床で実施した薬効および薬物動態に関する試験結果を発表した。
第1相臨床試験は、単回投与用量漸増試験として実施され、良好な安全性と忍容性が確認され、1日1回の経口投与で非臨床試験から予測されたウイルス減少効果に必要な目標血中濃度を上回ったとしている。