【新型コロナ】インフルエンザとの同時流行と重複感染は起こりうる 肺炎の重症化と長期化の可能性
「インフルエンザの流行期も控えたいま、油断せず、同時流行の可能性もあると考えて対策をとるべき」と指摘している。
今シーズンにインフルエンザが流行しないという保証はない
新型コロナウイルスとA型インフルエンザウイルスは、どちらも飛沫感染する呼吸器感染症の病原体で、パンデミックを起こすことが知られている。
インフルエンザは世界中で毎年季節性に流行し、多くの患者が報告されるが、昨シーズンは世界的に患者数が激減した。その理由として、世界的な人・物の移動の制限、マスクの着用、手洗いの励行、密を避ける行動などの新型コロナ対策が功を奏したと考えられている。
さらに、新型コロナウイルス感染によるウイルス干渉を理由に挙げる専門家もいる。ウイルス干渉は、特定のウイルスが感染すると他のウイルスの感染/増殖が抑制されるという現象であり、双方のウイルスの増殖が抑制されることもある。
研究グループは、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが同一個体に同時感染することがあるのか、また重複感染した場合に病態はどうなるのかを調べるため、双方のウイルスに感受性があり、肺炎症状を呈するハムスタ―を用いて検証実験を行った。
その結果、新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスはそれぞれ単独の感染で肺炎を引き起こすが、インフルエンザウイルスは感染4日後、新型コロナウイルスは感染6日後にもっとも重篤な肺炎像を示すことが分かった。
さらに、同時感染した場合は、それぞれの単独感染時よりも肺炎が重症化し、回復もさらに遅れることが明らかになった。
また、感染後の肺での双方のウイルス量を調べると、いずれのウイルスも単独感染時と重複感染時でウイルス量に差がないことが確認された。ただし、肺の組織病理解析の結果、肺での双方のウイルスは同種の組織・細胞に感染するが、同一の場所では共感染していないことが確認された。
このことは、双方のウイルスは個体レベル、臓器レベル(肺)ではウイルス干渉を起こさないが、細胞レベルでのウイルス干渉は起こりうることを示している。つまり、「両ウイルスの重複感染と同時流行は起こりうる」ことを示唆している。
「インフルエンザは通常北半球での流行に先駆けて、季節が逆の南半球で日本の夏の時期に流行することが知られています。今夏も南半球での流行は報告されなかったので、今シーズンも流行しないのではないかともみられていますが、昨シーズン、インフルエンザと同様に感染者数が激減した小児のRSウイルス感染症が今夏は流行し、多くの感染者が報告されたことから、インフルエンザが流行しないという保証はありません」と、研究グループでは述べている。
「また、今回の研究で新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスが重複感染すると肺炎が重症化・長期化する可能性も示されました。新型コロナのパンデミックがいまだ終息せず、インフルエンザの流行期も控えていますので、油断せず、同時流行の可能性もあると考えて対策をとるべきだと考えます」と指摘している。
研究は、長崎大学感染症共同研究拠点の木下貴明研究員、安田二朗教授らのグループと、原爆後障害医療研究所の西 弘大助教、帯広畜産大学渡邉謙一助教によるもの。研究成果は、学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
長崎大学感染症共同研究拠点
Co-infection of SARS-CoV-2 and influenza virus causes more severe and prolonged pneumonia in hamsters(Scientific Reports 2021年10月28日)