【新型コロナ】感染後3ヵ月で糖尿病とCVDのリスクが上昇 糖尿病リスクは4週間で81%上昇
新型コロナ患者42万8,000人以上の大規模データベースを使用
新型コロナ患者は、感染直後、とくに感染後3ヵ月で、糖尿病と心血管疾患を発症するリスクが高くなり、糖尿病の場合は23週間後、心血管疾患の場合は7週間後に、疾患リスクはベースラインに戻ることが、英キングス カレッジ ロンドンの研究で示された。
研究は、同大学公衆衛生学部のEmma Rezel-Potts氏とMartin Gulliford教授らによるもので、研究成果はオープンアクセスジャーナル「PLOS Medicine」に掲載された。
研究グループは、新型コロナに感染した群で感染の翌年に、感染しなかった群に比べ、糖尿病および心血管疾患の新規発症率が高いかを調査した。
新型コロナ患者42万8,650人の2020年~2021年の匿名化された医療記録データと、年齢、性別、家庭構成、喫煙歴、BMI、収縮期血圧などの一致した同数の対照群を分析した。
ウイルス感染から4週間で糖尿病診断は81%増加 12週間でも27%増加
その結果、新型コロナ患者はウイルス感染してから最初の4週間で、糖尿病の診断が81%増加し(調整レート比、RR1.81、95%信頼区間(CI):1.51~2.19)、感染後12週間でリスクは27%上昇したまま(同、RR1.27、95%CI:1.11~1.46)であることが示された。
新型コロナは、主に肺塞栓症と不整脈の発症により、心血管疾患の診断全体の約6倍の増加と関連していた(同、RR5.82、95%CI:4.82~7.03)。
肺塞栓症は約11.5倍(同、RR11.51、95%CI:7.07~18.73)、心房性不整脈は約6.5倍(同、RR6.44、95%CI:4.17~9.96)、静脈血栓症は約5.5倍(同、RR5.43、3.27~9.01)にそれぞれ上昇した。
心血管疾患の新規診断のリスクは、感染後5週間で低下し始め、12週間から1年以内にベースラインレベル以下に戻った。心血管疾患の発生率は5週間~12週間で約1.5倍(同、RR1.49、95%CI:1.28~1.73)となり、13週間~52週間で0.8倍(同、RR0.80、95%CI:0.73~0.88)に減少した。
感染後3ヵ月間は特別な警戒が必要 医師がアドバイスするべき
研究グループは、新型コロナ感染は糖尿病と心血管障害のリスク増加に関連していると結論付けているが、ウイルス感染患者のこれらの病状の発生率は長期的には増加していないことを指摘している。
「プライマリケアからの電子医療記録の大規模な全国データベースを使用し、COVID-19感染後の急性期および長期の心血管疾患および糖尿病のリスクを解明できた。COVID-19患者がこれらのアウトカムのリスクがもっとも高いのは最初の4週間であり、糖尿病リスクは少なくとも12週間は増加したままだ。COVID-19から回復した人々の糖尿病リスクの低減に焦点をあてた臨床および公衆衛生介入長期的には、非常に有益である可能性がある」と、Rezel-Potts氏は述べている。
同大学生命科学・医学部のAjay Shah教授は、「COVID-19が心血管疾患と糖尿病の発症に及ぼす長期的な影響についての大規模な人口ベースの研究の成果は、これまでにCOVID-19に罹患した数百万人もの患者を診療する医師にとって非常に重要だ。感染後に少なくとも最初の3ヵ月間は、特別な警戒が必要であることが示された」と指摘している。
この知見にもとづき、医師は新型コロナから回復した患者に対し、食事や運動などの生活スタイル改善を通じて、糖尿病リスクを減らすことをアドバイスするべきだとしている。
なお、今回の研究は医療記録データにもとづいており、参加者の曝露とアウトカムは登録時に誤って分類されたものも含まれる可能性を指摘している。
COVID-19 patients more likely to develop cardiovascular diseases and diabetes soon after infection (PLOS 2022年7月19日)
Cardiometabolic outcomes up to 12 months after COVID-19 infection. A matched cohort study in the UK (PLOS Medicine 2022年7月19日)