SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はCVDリスクが中等度の2型糖尿病患者でも有利 DPP-4阻害薬やSU薬と比較 36万人超のDM患者を調査
CVDリスクが中等度の2型糖尿病患の腎臓合併症の予防に適した薬剤はどれか?
SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬は、ベースラインで心血管疾患(CVD)リスクが中等度の2型糖尿病患での腎臓合併症の予防で、DPP-4阻害薬とスルホニル尿素(SU)薬よりも優れていることが、米国の36万人超の成人を対象とした医療請求データの解析で示された。
研究は、ワシントン州立大学薬学部薬物療法学科のJoshua J. Neumiller、Allen I. White特別教授らによるもの。研究成果は、「Clinical Journal of the American Society of Nephrology」に掲載された。
慢性腎臓病(CKD)は糖尿病に関連する重篤な合併症であり、診療ガイドラインでは高リスク患者の心腎リスクを軽減するために、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の投与が推奨されているが、ベースラインで心血管疾患(CVD)リスクが低い患者で、他の一般的に処方されている血糖降下薬と比較して、これらの薬剤を早期に開始することのベネフィットは明らかにされていない。
そこで研究グループは、2型糖尿病および中等度のCVDリスクをもつ患者での、DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬、SU薬による治療と、▼CKDのステージ3~5の発症、▼腎不全あるいは腎代替療法(KRT)の必要性を主要アウトカムとした後ろ向き観察研究を行った。
OptumLabs Data Warehouseの医療請求データを使用し、ターゲット試験を模倣し、主要な腎臓複合アウトカムとの比較関連を調べた。主要な複合アウトカムのすべてのコンポーネントと死亡を二次複合アウトカムとした。
OptumLabsは、カリフォルニア大学などが運営している、約1億6,000万件の匿名化された医療請求と臨床情報を記録したデータベース。
研究グループは、21歳以上の2型糖尿病の成人36万4,714人を特定し、うち7万8,843人がDPP-4阻害薬、4万2,049がGLP-1受容体作動薬、4万5,466人がSGLT2阻害薬、19万8,356人がSU薬により、それぞれ治療が開始された。
SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬はCVDリスクが中等度の2型糖尿病患者でもDPP-4阻害薬やSU薬より有利
その結果、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、主要アウトカムに関してDPP-4阻害薬よりも有利であることが示された。DPP-4阻害薬に対し、SGLT2阻害薬は主要アウトカムの進行を29%減らし[ハザード比(HR) 0.71、95%CI 0.67~0.74]、GLP-1受容体作動薬は13%減らした[HR 0.87、同 0.83~0.92]。
さらにSU薬に対しては、SGLT2阻害薬は主要アウトカムの進行を31%減らし[HR 0.69、95%CI 0.66~0.73]、GLP-1受容体作動薬は14%減らした[HR 0.86、同 0.82~0.91]。
SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬を比較すると、主要複合アウトカムについては、SGLT2阻害薬の方が優れていた[HR 0.81、95%CI 0.75~0.76]。
また、SGLT2阻害薬は全体として、CKDステージ3~5への進行を29%減らし[HR 0.71、95% CI 0.67~0.74]、腎不全あるいは腎代替療法の必要性のリスクを28%減らした[HR 0.72、同 0.70~0.75]。GLP-1受容体作動薬は、DPP-4阻害薬に比較しそれぞれのリスクを13%[HR 0.87、同 0.83~0.92]および14%[HR 0.86、同 0.82~0.90]減らした。
「過去の大規模な心血管アウトカム試験でも、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬が、eGFRの進行および/あるいはアルブミン尿の新規発症あるいは悪化などを抑制し、定義がさまざまに異なる二次性腎疾患の探索的アウトカムに対する有益性、およびCVDに対する有益性が示されている」と、研究者は述べている。
「現在、SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬は、CVDリスクが中等度の患者では、他の血糖降下療法よりも優先的に推奨されていないが、今回の研究結果を含め、中等度のCVDリスクをともなう2型糖尿病患者の臨床的な意思決定をサポートする、リアルワールドでの重要なエビデンスが増えている」としている。