CGMとポンプを組合せた「人工膵臓」が2型糖尿病患者の血糖管理を改善 高血糖を半分に減少

2023.02.02
 英ケンブリッジ大学は、CGMとインスリンポンプを組合せた「クローズド ループ システム(人工膵臓)」を使用した、2型糖尿病患者を対象とした非盲検クロスオーバーランダム化比較試験を実施し、血糖値が目標範囲内に収まっている時間を2倍に増加し、高血糖を経験した時間を半分に減少するなどの成果を得たと発表した。

 人工膵臓は、同大学が開発した独自のアルゴリズムを搭載したもので、これまで1型糖尿病患者に対し有効であることを示してきたが、今回の試験で2型糖尿病患者にとっても有用であることを証明した。

インスリン投与量の調整を完全に自動化した「人工膵臓」

 ケンブリッジ大学が今回の試験で使用した、インスリンを自動投与する「クローズド ループ システム(人工膵臓)」は、既存のCGM(持続血糖モニター)とインスリンポンプを、独自に開発したアプリ「CamAPS HX」と組み合わせたもの。

 このアプリは、血糖値を目標範囲内に維持するために必要なインスリンの量を予測するアルゴリズムにより動作する。なお、CGMはDexcomの「Dexcom G6 CGM」を、インスリンポンプはDana Diabecareのものを使用している。

 これまで、インスリンを自動投与する「クローズド ループ システム(人工膵臓)」は、2型糖尿病に対しては、入院患者や透析患者でしか検討されていなかった。

 今回の試験は、ケンブリッジ大学病院NHS財団トラストに所属するアデンブルック糖尿病・内分泌クリニックで募集された、透析治療を必要としていない2型糖尿病患者26人を対象に、2020年12月~21年11月に実施された。

 使用された人工膵臓は、これまで小児から成人の1型糖尿病患者に使用されてきたものと異なり、インスリン投与量の調整が完全に自動化されており、患者は基本的にはデバイスの操作を行う必要がないという。1型糖尿病の場合は、患者が食事などに合わせて調整する必要があった。

 試験に参加した患者をランダムに2つの群に割り付け、最初の群は人工膵臓を8週間試使用し、その後で毎日複数回のインスリン注射を行う標準治療に切り替えた。2つめの群は、最初にこの対照療法を行い、8週間後に人工膵臓に切り替えた。

 主要評価項目は、血糖値が目標範囲内(70~180mg/dL)にあった時間の割合、副次評価項目は血糖値が180mg/dL超にあった時間の割合、平均血糖値、平均HbA1c値、低血糖(70mg/dL未満)の時間の割合で、当初割り付けた群にしたがって分析するintention-to-treat(ITT)解析を行った。

ケンブリッジ大学が開発した「人工膵臓」
出典:ケンブリッジ大学、2023年

血糖値が目標範囲内にあった時間は2倍に増加 高血糖の時間は半分に減少

 その結果、血糖値が目標範囲内にあった時間の割合は、人工膵臓群では66.3%±14.9%となり、標準治療を行った対照群の32.3%±24.7%に比べ有意に長く、平均群間差は35.3%ポイント(95%CI 28.0~42.6%、P<0.001)だった。

 血糖値180mg/dL超の時間の割合は、人工膵臓群では33.2±14.8%となり、対照群の67.0±25.2%に比べ有意に短く、平均群間差は−35.2%ポイント(95% CI−42.8~−27.5%、P<0.001)だった。

 平均血糖値も、人工膵臓群では166±22mg/dLとなり、対照群の227±54mg/dLに比べ有意に低かった(同−65mg/dL、−83~−45mg/dL、P<0.001)。同様に、HbA1c値は、人工膵臓群では7.3±0.8%となり、対照群の8.7±1.2%に比べ有意に低かった(同−1.4%、−1.8~−1.0%、P<0.001)。

 70mg/dL未満の低血糖の時間の割合は同等で、中央値は人工膵臓群で0.44%(同0.19~0.81%) 対照群で0.08%(四分位範囲0.00~1.05%)だった(P=0.43)。

 有害事象としては、危険な低血糖を経験した患者はいなかったが、人工膵臓の使用中にポンプのカニューレ部位に膿瘍ができたため入院した患者が1名いた。

 なお、解析対象となった26例は、人工膵臓先行群14例、標準治療先行群12例、女性27%で、年齢〔平均値±標準偏差(SD)〕は59±11歳、開始前のHbA1c値は9.0±1.4%だった。

 研究成果は、「Nature Medicine」に2023年1月11日付けで掲載された。

「人工膵臓」は2型糖尿病患者が自宅で安全に利用できる安全な技術

 研究を共同で主導した、同大学ウェルカムMRC代謝科学研究所のCharlotte Boughton氏は、「2型糖尿病患者の多くは、インスリン注射など、現在利用できる治療法により血糖管理を行うのに苦労している。今回の試験で、人工膵臓は安全で効果的なアプローチであり、自宅で安全に実装できる使いやすい技術であることを実証できた」と述べている。

 同研究所のAideen Daly氏は、「インスリン療法を広範に実施するうえで障壁となっているのは、危険な低血糖のリスクに対する懸念だ。今回の試験では、重度な低血糖を経験した患者はおらず、目標血糖値よりも低値になった時間もほとんどなかったことも注目に値する」と述べている。

 試験に参加した患者からのフィードバックによると、ほとんどの患者は血糖値がシステムにより自動的に制御されることに満足しており、10人中9人(89%)は「糖尿病の管理に費やす時間が全体的に減った」と回答した。

 患者にとっての人工膵臓の主なメリットとして、「注射や穿刺の必要がなくなること」「血糖管理への信頼が高まったこと」を強調している。

 マイナス面としては、「低血糖リスクに対する不安の高まり」があった。これは研究者によると、患者の血糖値に対する認識やモニタリングへの意識の高まりや、デバイスを実際に装着することへの煩わしさを反映している可能性がある。

 研究グループは、今回の研究結果にもとづき、さらに大規模な多施設研究を実施することを計画している。さらに、2型糖尿病の外来患者がこの人工膵臓を利用しやすくするため、承認取得のための申請を提出したとしている。

Artificial pancreas successfully trialled for use by type 2 diabetes patients (ケンブリッジ大学 2023年1月11日)
Fully automated closed-loop insulin delivery in adults with type 2 diabetes: an open-label, single-center, randomized crossover trial (Nature Medicine 2023年1月11日)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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