肥満者へのGLP-1受容体作動薬の週1回投与で10年以内の糖尿病発症リスクが低下
セマグルチドは血糖降下薬として開発されたが、その後、米国などでは肥満治療薬としても承認されている。セマグルチドの肥満治療への転用にあたり、有効性と安全性の確認のため、「Semaglutide Treatment Effect in People with obesity;STEP」という一連の第3相臨床試験が実施された。今回発表されたGarvey氏らの研究は、それらの臨床試験のうちSTEP1およびSTEP4のデータを用いて、同薬の2型糖尿病発症リスクへの影響を検討したもの。
研究参加者は肥満・過体重者であり、STEP1は1,961人、STEP4は803人。介入に用いられたセマグルチドの投与量は週1回2.4mgであり、実薬群、対照群とも食事・運動療法は継続した。STEP1は参加者全員に実薬またはプラセボを68週間投与するというデザイン。一方、STEP4は、最初の20週間は全員に実薬を投与し、その後は実薬群とプラセボ群の2群に分けて48週間介入するというデザインで実施された。2型糖尿病発症リスクは、年齢、性別、人種、BMI、血糖値、トリグリセライド、HDL-C、血圧などの既知のリスク因子に基づき、向こう10年間の予測発症率である精度検証済みリスクスコア(Cardiometabolic Disease Staging;CMDS)を算出して比較した。
検討の結果、STEP1では、介入前の2型糖尿病発症リスクスコアは実薬群18.2%、プラセボ群17.8%と同等だったが、68週間の介入後には、同順に7.1%、15.6%となり、リスクスコア低下幅に有意差が認められた〔実薬群は61%低下、プラセボ群は13%低下(P<0.01)〕。また、ベースラインの耐糖能に基づき、正常耐糖能と前糖尿病に層別化して解析した結果は、双方のカテゴリーともに実薬群の発症リスクが有意に低く、交互作用は非有意だった(交互作用P=0.45)。なお、リスクスコアの低下幅は体重減少と関連しており、実薬群の減量幅は17%、プラセボ群は3%だった。
STEP4では、介入前の発症リスクスコアが20.6%であり、20週間の実薬による介入後、実薬継続に割り付けられた群の発症リスクスコアは11.4%、プラセボ切り替えに割り付けられた群は10.7%と、同等にスコアが低下していた。しかし68週後(割り付けから48週後)には、実薬群の発症リスクスコアは7.7%とさらに低下していたのに対して、プラセボ群は15.4%と上昇しており、変動幅に有意差が認められた〔実薬群は32%低下、プラセボ群は41%上昇(P<0.01)〕。
この結果を基にGarvey氏は、「肥満と糖尿病の有病率が上昇している現在、セマグルチドはこれらの慢性的な状態や疾患による疾病負担を軽減するために、効果的な介入となり得るのではないか」と述べている。
なお、発表者のうち2人が、セマグルチドのメーカーであり本研究の資金を提供したノボノルディスク社を含む、製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。また、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものとみなされる。
[HealthDay News 2022年9月27日]
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