糖尿病発症を4年防ぐと長期予後が改善 糖尿病予備群の段階で介入が必要

2024.07.18
IGTからの糖尿病発症を4年防げば長期予後が改善する

 耐糖能異常(IGT)該当者が食事・運動療法によって糖尿病未発症の状態を4年間維持できれば、長期予後が改善することを示すデータが報告された。ただし、未発症期間が4年よりも短い場合、この効果は得られないという。中国医学科学院・北京協和医学院(中国)のXin Qian氏らの研究によるもので、詳細は「PLOS Medicine」に7月9日掲載された。

 IGTなどの糖尿病予備群の状態から生活習慣を改善し糖尿病発症を防ぐことで、将来の合併症リスクが低下することは、既に複数の研究によって示されている。しかし、糖尿病発症を何年先延ばしにすればそのような効果を期待できるのかは、これまで明らかにされていない。

 そこでQian氏らは、中国・大慶市(Da Qing)在住のIGT該当者に対する6年間の食事・運動介入による糖尿病抑制効果を検討した「大慶糖尿病予防研究(DQDPS)」のデータを事後解析し、この点を検討した。

 解析対象は、75gブドウ糖負荷試験によりIGTと判定されていた540人。これらDQDPS参加者は、食事療法群、運動療法群、食事療法と運動療法の併用群、および、どちらの介入も行わない対照群に割り付けられた。

 耐糖能は2年ごとに評価され、2年目に糖尿病と診断された人は13.0%、4年目では33.0%、6年目では48.9%だった。今回の研究ではDQDPS終了から30年間追跡し、死亡、心血管イベント、細小血管症というエンドポイントの発生で長期予後を比較した。

 結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、喫煙、BMI、血圧、血清脂質、血糖値、DQDPSにおける介入の割り付け、および降圧薬、脂質改善薬、血糖降下薬の処方)を調整後の解析で、IGTから糖尿病の発症までの期間が4年以上であった場合には、長期予後が良好であることが明らかになった。

 たとえば、4年目に糖尿病を発症していなかった人は発症していた人に比べて、全死亡のハザード比(HR)が0.74[95%信頼区間 0.57~0.97]であり、心血管イベントはHR0.63、細小血管症はHR0.62であって、いずれも有意なリスク低下が観察された。

 心血管死リスクについては、4年目の糖尿病の有無では有意差がなかったが[HR 0.84、同 0.58~1.22]、6年目にも糖尿病未発症だった人は有意に低リスクだった[HR 0.56、同 0.39~0.81]。一方、2年目の糖尿病の有無での比較では、いずれのエンドポイントの発生率も、有意差がみられなかった。

 この結果から著者らは、「IGTの人は糖尿病の発症を先延ばしするほど、長期的な健康状態が良くなることが示唆される。IGTから糖尿病の発症、および糖尿病関連の血管合併症を抑制するために、効果的な介入を検討すべきだ」と述べている。

[HealthDay News 2024年7月10日]

Copyright ©2024 HealthDay. All rights reserved.
Photo Credit: Adobe Stock

糖尿病・内分泌プラクティスWeb 糖尿病・内分泌医療の臨床現場をリードする電子ジャーナル

脂質異常症の食事療法のエビデンスと指導 高TG血症に対する治療介入を実践 見逃してはいけない家族性高コレステロール血症
SGLT2阻害薬を高齢者でどう使う 週1回インスリン製剤がもたらす変革 高齢1型糖尿病の治療 糖尿病治療と認知症予防 高齢者糖尿病のオンライン診療 高齢者糖尿病の支援サービス
GLP-1受容体作動薬の種類と使い分け インスリンの種類と使い方 糖尿病の経口薬で最低限注意するポイント 血糖推移をみる際のポイント~薬剤選択にどう生かすか~ 糖尿病関連デジタルデバイスの使い方 1型糖尿病の治療選択肢(インスリンポンプ・CGMなど) 二次性高血圧 低ナトリウム血症 妊娠中の甲状腺疾患 ステロイド薬の使い分け 下垂体機能検査
NAFLD/NASH 糖尿病と歯周病 肥満の外科治療-減量・代謝改善手術- 骨粗鬆症治療薬 脂質異常症の治療-コレステロール低下薬 がんと糖尿病 クッシング症候群 甲状腺結節 原発性アルドステロン症 FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症 褐色細胞腫

医薬品・医療機器・検査機器

糖尿病診療・療養指導で使用される製品を一覧で掲載。情報収集・整理にお役立てください。

一覧はこちら

最新ニュース記事

よく読まれている記事

関連情報・資料