食事療法を個別化し糖尿病と肥満症を改善 1人ひとりの好みやスタイルに合わせた食事プログラム

2022.08.02
 イリノイ大学などが開発した、1日に摂取するカロリーを適正に制限しながら、タンパク質や食物繊維など、必要な栄養素を十分に摂れるように設計された食事プログラムが、体重管理を成功させるのに有用であることが明らかになった。

 プログラムの参加者の半数が、体重を5%以上減らし、維持するのに成功した。1人ひとりの食事の好みに合わせて個別化されたプログラムにより、食事療法は長続きしやすくなるという。

カロリー制限しながら、タンパク質や食物繊維は十分に

 イリノイ大学などが開発した「個別化食事改善プログラム(iDip)」は、1日に摂取するカロリーを適正に制限しながら、タンパク質や食物繊維など、必要な栄養素を十分に摂れるようにすることを目標に開発された。

 プログラムは、参加者のそれぞれの食事の好みにもとづき、個別化されたアプローチにより、無理なく効果的な食事プランを作れるのが特徴となっている。独自のビジュアルツールを使用し、利用者が視覚的にも分かりやすく食事療法を理解できるよう工夫されている。

 これまでも、プログラムに参加した体格指数(BMI)が27以上の肥満の人が、平均して6ヵ月で6.1kg、12ヵ月で4.8kg、それぞれ体重減少を達成するなどの成果を出している。

 「iDipは、食事のカロリーを制限しながら、タンパク質や食物繊維といった大切な栄養素は十分に摂り、無理なく体重を減らせるよう設計されています。利用者が個別に、食事の計画を独自に作成できるようになっているのが特徴です」と、同大学栄養学部のミンディ リー氏は言う。

 「このプログラムでは、参加者が従うべき厳格な食事計画やレシピを押しつけることはありません。流行した低炭水化物ダイエットや低脂肪ダイエットなどのように、特定の食品グループを排除しているわけではなく、目標としているのは、利用者の食事の好みを尊重しながら、持続可能な体重管理プログラムを作成できるようにすることです」としている。

半数が体重を5%以上減らし維持するのに成功

 今回の2回目の臨床試験には、BMIが28以上の過体重や肥満で、24~59歳の男女14人が参加した。

 参加者の自己申告によると、多くは高血圧や糖尿病など、肥満に関連した健康悪化を経験しており、過去に2つ以上の市販のダイエットプログラムやダイエット食品を試したことがあった。

 参加者は12ヵ月のあいだ、管理栄養士が提供する計22回の1時間ほどの食事改善セッションに参加した。食事や栄養についての情報が教えられ、健康的な食料品の買い方や料理の仕方などが具体的に説明され、運動のメリットについてもアドバイスされ、減らした体重を維持する方法についても学んだ。

 最初の5ヵ月で、安全で効果的な減量に焦点があてた、12回のセッションに取り組んだ。参加者は、食事療法と食事の好みにもとづき、個別化されたダイエットプランをキッチンで作成する方法について学んだ。

 続く7ヵ月に開催された10回のセッションでは、健康的な食事と、減量後に健康的な体重を維持する方法に焦点があてられた。参加者は、食物を選び、食事を作り、食べ過ぎを防ぐためのスキルを身につけた。

 参加者は、毎週0.5kg近く体重を減らし、体格指数(BMI)が25に到達することを目標にした。Wi-Fi対応の体重計を使用して自宅で毎日体重を量り、食事を記録し、さらには食物の摂取頻度についてのアンケートにも回答した。

 それらのレポートは研究室のスタッフに届けられ、研究者は毎週、参加者の減量の進捗状況や、目標とした減量率、さらには6ヵ月の目標体重を示すチャートをまとめ、個別にアドバイスを提供した。

 その結果、12人がプログラムを終了し、うち半数は体重を5%以上減らすという目標を達成し、6ヵ月のフォローアップ期間もそれを維持するのに成功した。

食事療法は柔軟に行えることが大切

 「食事療法を柔軟に行えることは、減量に成功し、体重管理を維持し、健康的な食事を持続可能にするための鍵となります」と、イリノイ大学栄養学部の中村学教授は言う。

 「商業的に提供されている減量プログラムやサービスの多くは、期待するほどの効果を出せていませんが、もっとも大きな問題は、そうしたダイエットを維持できないことです」。

 「提供された食事プログラムに盲目的に従ったり、指示された食品のみを4~6ヵ月間摂取し続けると、確かに体重はある程度減りますが、プログラムを終えたり、製品を購入するのを止めると、体重はすぐに戻ってしまいます。利用者は結果として落胆してしまいます」としている。

 「個別化食事改善プログラム(iDip)」では、医師や栄養の専門家によって作成された食事ガイドラインにもとづき、1日の食事のカロリー摂取量を1,500kcal未満に管理し、飽和脂肪酸など体に悪い脂肪を抑えながら、タンパク質は約80g、食物繊維は約20g、それぞれ摂取できるよう調整されている。

 iDipは、管理栄養士や研究者によって開発された視覚的なツールもそなえていて、タンパク質と食物繊維の摂取量を十分に摂りながら、食事全体のカロリーを減らせるよう、分かりやすく理解できるように工夫されている。

個別のアドバイスで食事療法が長続きする

 毎日の食事記録をもとに、研究室のスタッフが毎週送信するフィードバックも、参加者の減量の進捗状況や、目標とした減量率に達成度、さらには6ヵ月の目標体重を示すチャートなどで視覚的に把握できるよう工夫された。参加者は、個別にアドバイスを受けられるようになっていた。

 「人類の歴史でこれまで、食事の摂取エネルギー量を知り、記録した文化はありませんでした。そうしたことは、長期的に持続するのは難しいことが知られています」と、中村教授は言う。

 「しかし、毎日体重を量り、変化や傾向を記録することは、非常に重要なツールになります。使いやすいツールがあれば、生涯にわたって維持するのは難しいことではなく、とくに体重を減らしたり、適正体重を維持したい人にとっては良い習慣になります」としている。

 iDipの3回目の臨床試験は、現在30人が参加して進行中であり、その結果には「さらに希望をもてる」としている。リー氏によると、6ヵ月が終了した時点で、参加者は体重を平均して6.5%減らしたという。

Individualized eating program helps dieters lose weight, keep it off (イリノイ大学 2022年7月14日)
A feasibility study to test a novel approach to dietary weight loss with a focus on assisting informed decision making in food selection (PLOS ONE 2022年5月26日)
The Effect of an Unrestrictive Diet Program (iDip) on Weight Management with Primary Focus on Protein and Fiber Intake and Calorie Reduction (Current Developments in Nutrition 2019年6月13日)
Individualized Diet Improvement Program for Weight Loss and Maintenance, Cohort 2 (iDIP) (ClinicalTrials.gov)

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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