【新型コロナ】感染約1年後も半数以上に後遺症が 倦怠感や味覚・嗅覚の異常、睡眠障害など 大阪公立大学
新型コロナではさまざまな後遺症状が残る
新型コロナではさまざまな後遺症状が残ることが、主に海外から報告されており、後遺症は多岐にわたり、咳や体のだるさが残るだけではなく、記憶力や集中力の低下も報告されている。さらに、精神的な不調や神経の障害も起こるため、日常生活に大きな影響を与える可能性がある。
一方、日本では新型コロナの後遺症に関する詳細な調査はあまり進んでおらず、後遺症を診察し研究を行っている医師も少ない。
そこで大阪公立大学の研究グループは、大阪の5つの病院(大阪公立大学医学部附属病院、大阪市立十三市民病院、大野記念病院、旧:阪和第二病院、ベルランド総合病院)で、2020年1月1日~2020年12月31日に新型コロナと診断された患者、もしくは各病院に入院した患者の計285人を対象に、新型コロナの感染後約1年後の後遺症に関するアンケート調査を実施した。
半数以上に1つ以上の後遺症状が 重症度と関係なく残りやすい症状も
その結果、対象者の半数以上(56%)に、少なくとも1つ以上の後遺症状が残っていることが明らかになった。
後遺症状は、比較的軽症の人(無症状者・軽症者)では10%以上で、▼倦怠感、▼抜け毛、▼集中力・記憶力の異常、▼睡眠障害が多く残っていた。
比較的重症の人(中等症~重症)でも10%以上で、▼倦怠感、▼呼吸困難感(息がしづらくなる感じ)、▼味覚障害、▼抜け毛、▼集中力の異常、▼記憶力の異常、▼睡眠障害、▼関節の痛み、▼頭痛が多く残っていた。
また、生活に大きな影響を与えている後遺症としては、▼倦怠感、▼喀痰(痰が多くでること)、▼呼吸困難感、▼嗅覚の異常、▼抜け毛、▼集中力や記憶力の異常、▼睡眠障害、▼関節の痛み、▼眼の充血、▼下痢がみられた。これらの症状が常に気になるほど残っていることで、QOLが低下している人が多くいることが示された。
次に、どのような人で後遺症が残りやすいかを検討するため、後遺症状と危険因子(患者の背景・持病・血液検査値)についてロジスティック回帰分析を実施。
その結果、新型コロナに感染した際の重症度と、▼喀痰、▼胸痛、▼呼吸困難感、▼咽頭痛、▼下痢などが非常に強く関連していることが分かった。さらに、新型コロナに感染した際の重症度と関係なく残る後遺症としては、▼倦怠感、▼味覚・嗅覚の異常、▼抜け毛、▼睡眠障害があった。
新型コロナの後遺症専門外来を開設
研究は、大阪公立大学大学院医学研究科臨床感染制御学の井本和紀病院講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
大阪公立大学医学部附属病院では、新型コロナの後遺症専門外来を2021年2月に立ち上げており、後遺症に関する今回の研究結果を、後遺症に苦しむ患者の治療に役立てたいとしている。
新型コロナのオミクロン株では、重症化する可能性は低く、また一部では、これまでに流行した株と比較すると、後遺症も少ないと報告されている。しかし、今回の研究により、重症度と関係なく残りやすい症状があることが明らかとなったことから、今後も新型コロナの後遺症については引き続き注意が必要としている。
「本研究により、若年層やワクチンをすでに打っている人、過去に新型コロナに感染しており重症化する可能性が低い人でも後遺症が残る可能性があり、感染に注意が必要だと言えます。現状では後遺症の治療法が確立されているわけではないため、これからも研究を継続していく必要があると考えています」と、研究グループでは述べている。
大阪公立大学大学院医学研究科臨床感染制御学
A cross-sectional, multicenter survey of the prevalence and risk factors for Long COVID (Scientific Reports 2022年12月27日)