アジア人は白人よりも低体重で糖尿病を発症 BMIだけでは糖代謝異常の多くが見逃される
多様な人種/民族で構成されている米国における糖代謝異常のスクリーニングは、BMIに関わりなく、35~70歳の全ての人を対象とした方が、公平性が向上することを示すデータが報告された。米ノースウェスタン大学ファインバーグ医学部のMatthew J. O'Brien氏らの研究によるもので、詳細は「American Journal of Preventive Medicine」に3月24日掲載された。
米国予防医学専門委員会(USPSTF)は2021年、若年肥満者の増加に対応して、過体重者(BMI25以上30未満)または肥満者(同30以上)の場合、糖代謝異常スクリーニング推奨年齢を35~70歳とした。これは、それ以前(2015年)の推奨の40~70歳から、若年者側へ5歳拡大したものとなっている。
ただし、人種/民族によってはBMI25未満であっても糖代謝異常のリスクが上昇することが知られている。例えば日本人を含むアジア人はそれに該当する。そのため、人種/民族を考慮せずにBMIでスクリーニング対象を絞り込むことによって、アジア人などの糖代謝異常が見逃されやすくなる懸念がある。これを背景としてO'Brien氏らは、米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータをUSPSTFの推奨基準にあてはめ、BMIを考慮する場合としない場合の感度・特異度を人種/民族別に検討した。
2017年1月~2020年3月のNHANES参加者のうち、糖尿病でないと自己申告し、かつ糖代謝関連検査データのある18歳以上の成人(妊婦を除く)は3,243人だった。このうち、USPSTFの2015年基準では37.3%、2021年基準では43.8%がスクリーニングの推奨される状態に該当した。
まず、推奨基準変更の感度・特異度への影響を全体で解析すると、感度は2015年基準では52.9%、2021年基準では58.6%とやや上昇し、特異度は同順に76.4%から69.3%へとやや低下していた。
次に、人種/民族別に2021年基準で解析すると、感度は黒人がもっとも高く63.6%で、ヒスパニック62.0%、白人59.1%と続いた。それに対してアジア人では43.5%と、ほかの人種/民族より有意に感度が低かった。つまり現行基準では、アジア人の糖代謝異常の多くが見逃されていることが明らかになった。反対に特異度はアジア人が82.3%ともっとも高く、ほかの人種/民族との間に有意差が認められた。
続いて、2021年基準からBMIに関する規定を除外して、35~70歳の全ての人を対象にスクリーニングした場合の感度・特異度を解析。すると、全体的な感度は67.8%、特異度は52.1%となった。これを人種/民族別に見ると、感度は黒人が70.4%でもっとも高く、次いでアジア人が70.1%であり、ヒスパニック68.4%、白人67.6%となり、人種/民族間の差異が抑制されてスクリーニングの公平性が向上した。
O'Brien氏は、「過体重や肥満は糖尿病の主要原因と考えられているため、BMIの規定を外した方が感度が高くなるというこの結果は、直感的な理解と反するものかもしれない。しかし、アジア人は白人よりも低体重で糖尿病を発症し得る。糖尿病という疾患は、無視することのできない人種/民族によるリスク差がある疾患だ。だからこそ、公平性を最大化し得るスクリーニングアプローチが必要とされる。全ての人の糖代謝異常を早期に見いだすことが、糖尿病がもたらす疾病負担の格差を抑制することにつながる」と話している。
なお、2人の著者が製薬企業との金銭的関係の存在を明らかにしている。
[HealthDay News 2023年4月7日]
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