糖尿病は過活動膀胱のリスクを押し上げる 全身の慢性炎症が関与か
近年、糖尿病とOABとの潜在的な関連を示唆する研究報告が散見される。この関連のメカニズムとして、全身性慢性炎症の関与を指摘する報告もある。ただし、大規模な疫学研究のデータはまだ不足しており、両者の関連の機序の詳細も明らかでない。これを背景としてHe氏らは、糖尿病や高血糖とOAB有病率の関連、およびその関連に慢性炎症が及ぼす影響を検討した。
この研究には、2007~2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータが利用された。NHANESでは、過活動膀胱症状スコア(OABSS)が調査に用いられており、OABSSが3点以上の場合にOABと定義した。解析対象はデータ欠落のない2万3,863人(平均年齢49.7±17.6歳、男性49.7%、BMI 29.3±7.0)で、このうち4,894人(20.5%)がOABと判定された。
OAB群と非OAB群を比較すると、前者は高齢で女性が多く、BMIが高値という有意差があった。また、HbA1c[6.2±1.4 対 5.7±1.0%]、空腹時血糖値[FPG〔120.6±46.8 対 108.0±32.4mg/dL〕]、インスリン値[15.6±19.0 対 13.4±17.5μU/mL]という糖代謝関連指標も、全てOAB群の方が高値だった[全てP<0.001]。
年齢、性別、BMI、人種、教育歴、喫煙・飲酒習慣、座位時間、所得、高血圧・虚血性心疾患・心不全・脳卒中などを調整後、糖尿病(HbA1c6.5%以上などで定義)ではOABのオッズ比(OR)が77%高く[OR 1.77、95%信頼区間 1.62~1.94)]、前糖尿病(HbA1c6.0~6.4%などで定義)でもOABが多く見られた[OR 1.26、同 1.06~1.53]。また、HbA1c、FPG、インスリン値のいずれも、高値であるほどOABのオッズ比が上昇するという有意な非線形の関連が認められた。
次に、糖代謝関連指標とOABとの関連に全身性慢性炎症が関与している可能性を想定し、炎症マーカー(白血球、好中球、リンパ球、血小板数)の寄与度を媒介分析で検討した。その結果、白血球はOABとHbA1c、FPG、インスリン値との関連の、それぞれ7.23%、8.08%、17.74%を媒介し、好中球は同順に6.58%、9.64%、17.93%を媒介していることが分かった。リンパ球と血小板数については、有意な媒介効果が見られなかった。続いて行った機械学習を用いた検討により、HbA1cがOABを予測する最も重要な指標であることが示された。
著者らは、「これらの結果に基づきわれわれは、糖尿病は全身性の慢性炎症を惹起し、それによってOABのリスクを高める可能性があるという仮説を立てている」と述べている。
[HealthDay News 2024年6月4日]
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