SGLT2阻害薬「フォシーガ」が米国で心血管死および心不全による入院リスクの低減の適応を拡大
FDAが承認 左室駆出率を問わず心不全患者に対してフォシーガのベネフィットが提供可能に
アストラゼネカは、同社のSGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)が、米国で、成人の心不全患者の心血管死、心不全による入院、および心不全による緊急受診のリスク低減に対する承認を取得したと発表した。
「New England Journal of Medicine」に掲載された第3相DELIVER試験のデータから、フォシーガは、駆出率が軽度低下または駆出率が保持された心不全患者で、心血管死または心不全悪化の主要複合評価項目に関して統計学的に有意かつ臨床的に意義ある早期の抑制を達成したことが示された。
また、「Nature Medicine」に掲載された第3相DAPA-HF試験および第3相DELIVER試験の事前に規定された統合解析の結果では、心血管死、心不全による入院、または心不全による緊急受診の複合評価項目に対するフォシーガの治療効果が左室駆出率を問わず一貫していたことが示され、同剤は死亡率の改善が実証された最初のSGLT2阻害薬となった。
なお、第3相DAPA-HF試験および第3相DELIVER試験でのフォシーガの安全性および忍容性プロファイルは、これまでに十分確立されている安全性プロファイルと一致していた。
フォシーガは、米国、EU、中国、日本など、世界100ヵ国以上で、2型糖尿病、駆出率低下を伴う心不全(HFrEF)および慢性腎臓病(CKD)の治療薬として承認されている。直近では、EU、英国、日本およびトルコで、左室駆出率を問わず全ての心不全を対象に適応拡大の承認を取得している。
※日本では2023年1月10日に電子化された添付文書が改訂された。
心不全は慢性かつ長期的で、時間の経過とともに悪化する疾患であり、米国では約700万人が罹患しているとしている。また、65歳以上の入院理由としてもっとも多い疾患でもあり、臨床的および経済的にも大きな負担となっている。心不全の患者全体の約半数は、駆出率が軽度低下した(HFmrEF)、または保持された状態(HFpEF)だが、これらの患者は大きな死亡や入院のリスクだけでなく、症状や身体的制限が特に大きく、生活の質が低下する。
「心不全患者さんの約半数が診断されてから5年以内に死亡してしまうことから、生命予後を改善するベネフィットをもたらし、忍容性が良好で心血管死のリスクを低減できる治療選択肢が必要とされています。米国でのフォシーガに対する今回の承認は、あらゆる種類の心不全患者が、より健康的な生活を送るうえでの支援になります」と同社では述べている。
DELIVER試験は、2型糖尿病の有無を問わず、左室駆出率が40%超の心不全患者の治療として、フォシーガの有効性をプラセボとの比較で評価するようにデザインされた、国際共同、無作為化、二重盲検、並行群間比較、プラセボ対照、イベント主導型第3相試験。
フォシーガは、基礎治療[SGLT2阻害薬の併用を除く、糖尿病や高血圧などのすべての併存疾患に対する地域の標準治療]への追加治療として1日1回投与された。DELIVER試験は、左室駆出率が40%超の心不全患者を対象に実施された試験で、6,263例の患者が無作為化された。
主要複合評価項目は、心血管死、心不全による入院、または心不全による緊急受診のいずれかが最初に発生するまでの期間。重要な副次評価項目は、心不全イベント(心不全による入院または心不全による緊急受診)および心血管死の総数、8ヵ月時点でのカンザスシティ心筋症質問票(KCCQ)の総症状スコアのベースラインからの変化量、心血管死までの期間、ならびに原因を問わない死亡までの期間など。
Dapagliflozin in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction (New England Journal of Medicine 2022年9月22日)
Dapagliflozin across the range of ejection fraction in patients with heart failure: a patient-level, pooled meta-analysis of DAPA-HF and DELIVER (Nature Medicine 2022年8月27日)