【生活習慣病の医療費】トップは入院では「脳血管障害」、入院外では「糖尿病」 一次予防と重症化予防が課題に 健保連
入院では「脳血管障害」の医療費が増加しており、入院外では「糖尿病」の医療費が増加している。
医療費:入院では「脳血管障害」が増加 入院外では「糖尿病」が増加
健康保険組合連合会(けんぽれん)が公表した2019年度の「生活習慣関連疾患医療費に関する調査」で、1,295組合の総医療費(医科+調剤)は約3兆5,227億円で、うち生活習慣関連10疾患医療費は約4,422億円で、全体の12.6%を占めることが明らかになった。
調査は、1,295組合の「医科」・「調剤」の電算処理レセプト(2億7,098万2,014件)をもとに、生活習慣関連10疾患の動向について、受診率や1人当たり医療費などの医療費関連指標にもとづき検討したもの。
10疾患とは、▼糖尿病、▼脳血管障害、▼虚血性心疾患、▼動脈閉塞、▼高血圧症、▼高尿酸血症、▼高脂血症、▼肝機能障害、▼高血圧性腎臓障害、▼人工透析。
入院と入院外に分けてみると、入院は576億円(生活習慣病の医療費が13.0%)、入院外は3,846億円(同87.0%)となり、生活習慣病の医療費は入院外が約9割を占めている。
生活習慣関連10疾患の入院の1,000人当たりの受診率は、(1)高血圧症(8.8件)がもっとも多く、(2)糖尿病(7.0件)、(3)高脂血症(5.0件)と続く。家族では、(1)高血圧症(4.4件)がもっとも多く、(2)糖尿病(3.9件)、(3)高脂血症(2.6件)と続く。
入院外の受診率は、(1)高血圧症(873.6件)がもっとも多く、(2)高脂血症(801.0件)、(3)糖尿病(593.9件)と続く。家族では、(1)高脂血症(366.3件)がもっとも多く、(2)高血圧症(334.5件)、(3)糖尿病(251.0件)と続く。
医療費構成割合は、入院では、(1)脳血管障害(37.1%)、(2)虚血性心疾患(28.4%)、(3)糖尿病(12.5%)の順に高く、入院外では、(1)糖尿病(31.8%)、(2)高血圧症(25.3%)、(3)高脂血症(18.2%)の順に高い。
1人当たり医療費は、入院では、(1)脳血管障害(976円)、(2)虚血性心疾患(943円)、(3)糖尿病(336円)の順に高く、家族は、(1)脳血管障害(531円)、(2)人工透析(184円)、(3)糖尿病(169円)の順に高い。
入院外の医療費は、(1)糖尿病(6,249円)、(2)高血圧症(5,015円)、(3)高脂血症(3,371円)の順に高く、家族は、(1)糖尿病(2,169円)、(2)高血圧症(1,674円)、(3)高脂血症(1,514円)の順に高い。
入院の医療費は、(1)脳血管障害(101万5,052円)、(2)人工透析(78万42円)、(3)虚血性心疾患(51万6,257円)の順に高く、家族は、(1)人工透析(108万3,635円)、(2)脳血管障害(91万6,042円)、(3)動脈閉塞(29万6,925円)の順に高い。
入院では、年齢が上がるとともに「虚血性心疾患」の医療費も高まっており、60歳を過ぎると4割程度を占める。「脳血管障害」は、▼入院期間が長い、▼1日当たり医療費が高いなど、医療費増の要因となっており、医療費が若い世代にシフトしている傾向がある。
受診率が高い「糖尿病」「高血圧症」「高脂血症」については、生活習慣の改善による「一次予防」と、適正な受診治療による「重症化予防」が重要だ。
特定健診や特定保健指導で、「生活習慣の改善指導による予防」を促し、多忙や面倒であるなどの背景による「軽症者の治療からのドロップアウト」を防止し、重症化を予防する取り組みが重要となる。治療では、同じ効果で低価格の「後発医薬品」の使用も進める必要もあるとしている。また、オンライン診療の活用は、治療からのドロップアウトの防止に役立てられる可能性がある。