【新型コロナ】オミクロン株流行期でのワクチンの有効性を調査 ブースター接種により予防効果は高まる

2022.02.21
 新型コロナのワクチンについて、2回接種により獲得した免疫が半年程度で減衰することや、オミクロン株に対してはワクチンの有効性が減弱している可能性が指摘されている。

 そこで国立感染症研究所は、関東で上旬にはオミクロン株が9割以上を占め、下旬にはほぼすべての検出株がオミクロン株だったと想定される2022年1月3日以降の調査の暫定結果を報告した。

 オミクロン株流行期では、2回接種後でも、2ヵ月以降では有効率が一定程度低下していることが分かった。一方で、3回(ブースター)接種を受けた者は数が少ないものの、ブースター接種によりオミクロン株感染による発症予防効果が高まる可能性が示された。

2回接種後は2ヵ月以降で有効率が低下
ブースター接種によりオミクロン株に対する効果は高まる

 国立感染症研究所は、「新型コロナワクチンの有効性を検討した症例対照研究の暫定報告(第三報)」を発表した。

 新型コロナのワクチンについて、2回接種により獲得した免疫が半年程度で減衰することが確認されており、国内でも2021年12月から3回目の接種(ブースター接種)が開始された。

 また、2021年11月末以降に出現し、世界各地に急速に流行拡大した感染・伝播性や抗原性の変化が懸念されるオミクロン株(B.1.1.529系統)については、デルタ株を含む過去の流行株に比べワクチンの有効性が減弱している可能性が指摘されている。

 そこで研究グループは、関東で上旬にはオミクロン株が9割以上を占め、下旬にはほぼすべての検出株がオミクロン株だったと想定される2022年1月3日以降の調査での暫定結果を報告した。

 今回の調査により、オミクロン株流行期では、2回接種後でも、2ヵ月以降では有効率が一定程度低下していることが分かった。一方で、3回(ブースター)接種を受けた者は数が少ないものの、ブースター接種によりオミクロン株感染による発症予防効果が高まる可能性が示された。

 諸外国の報告として、英国からの報告では、オミクロン株感染による発症に対する、ファイザー製またはモデルナ製のワクチン接種の有効率は、2回接種2~4週後は65~70%、25週後には10%程度まで低下、ブースター接種2~4週後には60~75%に高まるという結果だった。

 米国からの報告では、mRNAワクチン(ファイザー製またはモデルナ製)3回接種と未接種の比較から、有効率はデルタ株で93.5%(95%信頼区間(95%CI)92.9-94.1%)、オミクロン株で67.3%(95%CI 65.0-69.4%)だった。

 今回の報告でのワクチン有効率は、信頼区間は広いものの、点推定値は、これら諸外国の報告よりも高い値だった。

 諸外国や今回の調査結果から、2回接種から期間が経過すると有効率が一定程度低下することが示唆されるため、ワクチン接種者でも、適切な感染対策を継続することがよりいっそう重要となっている。

 ただし、今回の報告からは、オミクロン株流行期でも2回接種による発症予防効果は一定程度認められることが示唆され、また、海外の報告からは重症化予防効果は発症予防効果よりも高い値で維持されることが示されており、未接種者は速やかに接種を検討することが重要としている。

 さらに、ブースター接種により、ワクチン有効率が高まることから、ブースター接種が可能になった際には接種を検討することも重要となる。

 なお、「調査は迅速な情報提供を目的としている暫定的な解析であり、また、英国からの報告ではブースター接種から一定期間経過すると有効率が低下する可能性が示唆されており、今後も解析を適宜行い、経時的に評価していくことが重要です」と、研究グループでは述べている。

発熱外来などを受診した成人1,352人を解析

ワクチン有効率(暫定値;過去の報告の推定値も含む)
出典:国立感染症研究所、2022年

 研究グループは、2022年1月3日~31日に、関東の複数医療機関の発熱外来などを受診した成人(20歳以上)を対象に、検査前に基本属性、新型コロナワクチン接種歴などを含むアンケートを実施。除外基準である未成年者、意識障害のある者、日本語でのアンケートに回答できない者、直ちに治療が必要な者、本アンケート調査に参加したことのある者には調査参加の打診は行われなかった。

 のちに各医療機関で新型コロナの診断目的に実施している核酸検査(PCR)の検査結果が判明した際に、検査陽性者を症例群(ケース)、検査陰性者を対照群(コントロール)と分類。発症から14日以内で、37.5℃以上の発熱、全身倦怠感、寒気、関節痛、頭痛、鼻汁、咳嗽、咽頭痛、呼吸困難感、嘔気・下痢・腹痛、嗅覚味覚障害のいずれか1症状のある者に限定して解析した。

 ワクチン接種歴については、(1)未接種、(2)1回接種後、(3)2回接種後0~2ヵ月(0~60日)、(4)2回接種後2~4ヵ月(61~120日)、(5)2回接種後4~6ヵ月(121~180日)、(6)2回接種後6ヵ月以降(181日以降)、(7)3回(ブースター)接種後の7つのカテゴリーに分類した。解析に際してワクチンの種類は区別しなかった。

 ロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比と95%信頼区間(CI)を算出し、ワクチン有効率は(1-オッズ比)×100%で推定した。多変量解析での調整変数としては、先行研究などを参照し、年代、性別、基礎疾患の有無、医療機関、カレンダー週、濃厚接触歴の有無、過去1ヵ月の新型コロナウイルス検査の有無、3ヵ月以上前の新型コロナ診断歴の有無がモデルに組み込んだ。ワクチン有効率では、多変量解析から得られた調整オッズ比を使用した。ワクチン接種歴などについて、欠損値のある者は解析から除外した。

 関東の13医療機関で、発熱外来などを受診した成人1,755人が同調査への協力に同意した。うち、発症日不明および発症から15日以降に受診した69人、症状のなかった334人は解析から除外した。

 解析に含まれた1,352人(うち陽性547人(40.5%))の基本特性は、年齢中央値(範囲)35(20-92)歳、男性686人(50.8%)、女性665人(49.2%)で、何らかの基礎疾患を342人(25.3%)で有していた。また、ワクチン接種歴について、未接種者は213人(16.0%)、1回接種した者は16人(1.2%)、2回接種した者は1,077人(81.1%)、3回接種した者は22人(1.7%)だった(ワクチン接種歴の欠損24人を除く)。

 接種日まで判明している者で、3回接種からの期間は中央値(範囲)16(3-37)日だった。なお、ワクチン接種歴のある1,115人中、回答のなかった52人を除いて466人(43.8%)がワクチン接種記録書などの原本や写真などを携帯しており、597人(56.2%)はカレンダーや手帳を見ながらアンケートを回答した。

 ワクチン接種歴を接種回数および接種後の期間別で7つのカテゴリーに分け、検査陽性者(症例群)と検査陰性者(対照群)とで比較した結果、未接種者を参照項とする調整オッズ比は、2回接種後0~2ヵ月で0.29(95%信頼区間(95%CI)0.13-0.64)、2回接種後2~4ヵ月で0.46(95%CI 0.30-0.71)、2回接種後4~6ヵ月で0.51(95%CI 0.35-0.75)、2回接種後6ヵ月以降で0.47(95%CI 0.26-0.84)、3回接種後で0.19(95%CI 0.06-0.59)だった。

 調整オッズ比を元にワクチン有効率を算出した結果、2回接種0~2ヵ月後では71%(95%CI 36-87)、2回接種2~4ヵ月後では54%(95%CI 29-70)、2回接種4~6ヵ月後では49%(95%CI 25-65)、2回接種6ヵ月以降では53%(95%CI 16-74)、3回接種後では81%(95%CI 41-94)だった。

 同調査は感染研および協力医療機関で、ヒトを対象とする医学研究倫理審査で承認され、実施された。なお、報告は迅速な情報共有を目的としたものであり、内容や見解は知見の更新によって変わる可能性があるとしている。

 今回の報告は、国立感染症研究所感染症疫学センターの新城雄士氏、有馬雄三氏、鈴木基氏、クリニックフォア田町の村丘寛和氏、KARADA内科クリニックの佐藤昭裕氏、公立昭和病院の大場邦弘氏、聖路加国際病院の上原由紀氏、有岡宏子氏、新宿ホームクリニックの名倉義人氏、インターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁氏、中鉢内科・呼吸器内科クリニックの中鉢久実氏、複十字病院の野内英樹氏、日本赤十字社医療センターの上田晃弘氏、横浜市立大学付属病院の加藤英明氏、池袋メトロポリタン・クリニックの沼田明氏、埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭氏、西田裕介氏、埼玉石心会病院の石井耕士氏、大木孝夫氏、国際医療福祉大学成田病院の加藤康幸氏、町田駅前内科クリニックの伊原玄英氏らによるもの。

国立感染症研究所感染症疫学センター
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[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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