米国では過去20年間で代謝的に健康な肥満が増加
MHOの有病率に関してはこれまでに複数の研究が報告されてきているが、結果に一貫性がみられない。一貫性の欠如は、MHOの定義が定まっていないことに起因すると考えられる。具体的には近年、MHOをより厳格に定義付けるようになってきた。これは、肥満者では心血管疾患リスク因子をわずかでも有する場合にはイベントリスクが上昇するという知見にもとづく変化。
これを背景として、華中科技大学同済医学院(中国)のJiang-Shui Wang氏らは、過去20年間のMHOの有病率を同一の判定基準で算出し、その年次推移を検討した。なお、本研究におけるMHOの判定基準とは、肥満または腹部肥満(BMI30以上またはウエスト周囲長が男性は102cm以上、女性は88cm以上)でありながら、メタボリックシンドローム(MetS)の4種類の構成因子を一つも有していないこと。
解析には、1999/2000年~2017/2018年の米国国民健康栄養調査(NHANES)のデータを用いた。当該期間10サイクルのNHANESの成人参加者は、2万430人(年齢の加重平均が47.1±0.2歳、女性50.8%)だった。MHOの年齢調整有病率は、1999/2000年の3.2%から2015/2018年には6.6%へと増加していた(傾向性P<0.001)。全対象のうち肥満者は7,386人(48.0±0.3歳、女性53.5%)であり、その肥満群でのMHO有病率は同順に10.6%、15.0%だった(傾向性P=0.02)。MHOの有病率は、60歳以上、男性、非ヒスパニック系白人、高所得者、民間保険加入者、クラスIの肥満者(BMI30~35未満)でとくに高かった。
次に、肥満群において、代謝指標別に異常値を示す者の割合の推移を検討。高TG血症(150mg/dL以上)は44.9%から29.0%(傾向性P<0.001)、低HDL-C血症(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)は51.1%から39.6%(傾向性P=0.006)と有意に減少していた。それに対して空腹時血糖高値(100mg/dL以上または血糖降下薬の使用)は49.7%から58.0%へと有意に増加していた(傾向性P<0.001)。高血圧(130/85mmHg以上または降圧薬の使用)は57.3%、54.0%であり、有意な変化がなかった(傾向性P=0.28)。
一方、肥満であり何らかのMetS構成因子を有する代謝的に不健康な肥満(metabolically unhealthy obesity;MUO)の年齢調整有病率も、1999~2002年が25.4%、2015~2018年は34.3%であり、有意に増加していた(傾向性P<0.001)。
著者らは、「これらの結果は、肥満者、とくに肥満に伴う代謝異常の発症リスクの高い集団に対して、肥満関連合併症を抑制するための公衆衛生対策を強化する必要性があることを強調している」と述べている。
[HealthDay News 2023年3月10日]
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