初のバイスペシフィック抗体「ファリシマブ」が承認申請 糖尿病黄斑浮腫および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性に対し

2021.06.15
 中外製薬は、抗VEGF/抗Ang-2バイスペシフィック抗体「ファリシマブ」について、糖尿病黄斑浮腫(DME)および中心窩下脈絡膜新生血管をともなう加齢黄斑変性(nAMD)を対象に、承認申請を行ったと発表した。
 今回の承認申請は、DMEを対象としたYOSEMITE試験およびRHINE試験、ならびにnAMDを対象としたTENAYA試験およびLUCERNE試験の成績にもとづいている。「ファリシマブ」の日本での開発は同社が実施しており、国内からYOSEMITE試験およびTENAYA試験に参加している。

糖尿病黄斑浮腫および中心窩下脈絡膜新生血管をともなう加齢黄斑変性に対し 2本のグローバル臨床試験成績にもとづき申請

 糖尿病黄斑浮腫(DME)は、世界で約2,100万人が罹患している、糖尿病網膜症(DR)の視力低下の原因となる合併症。DRでは、血管の損傷および血管新生により、血液および/または血漿成分の網膜(眼から脳へ情報を伝達する視覚を司る器官のひとつ)への漏出が起こる。これにより、網膜への血液供給が部分的に途絶えるとともに、浮腫が生じる。

 DMEはこの損傷した血管からの漏出とそれにともなう浮腫が黄斑部、すなわち明瞭な視力を司る網膜の中心領域に生じる疾患。DMEを治療せずに放置すると失明や生活の質の低下につながる。

 また、加齢黄斑変性(AMD)は、鮮明な中心視力に関わる眼の器官に影響を及ぼす疾患。中心窩下脈絡膜新生血管をともなう加齢黄斑変性(nAMD)は、AMDの進行型であり、急速かつ重度の視力喪失の原因となりうる。

 異常な新生血管が黄斑下で無制御に増殖することで発症し、腫脹、出血、および/または線維化を引き起こす。世界全体では約2,000万人がnAMDに罹患しており、60歳以上における視力喪失の主な原因となる。

 「ファリシマブ」は眼科領域における初のバイスペシフィック抗体であり、多くの網膜疾患の原因である、アンジオポエチン-2(Ang-2)と血管内皮増殖因子-A(VEGF-A)が関与する2つの異なる経路を標的としている。Ang-2とVEGF-Aは血管構造の不安定化により、漏出を引き起こす血管を新たに形成し、炎症を起こすことで視力低下を引き起こす原因のひとつになる。

 「ファリシマブ」は、これら2つの経路を別々に遮断することで血管を安定化させ、網膜疾患を有する方の視力をより良く、より長く保てる可能性を考慮して設計されている。

 「ファリシマブ」は、DMEおよびnAMDに対する複数の第3相臨床試験で、最長16週の投与間隔を達成した初の眼内注射剤であり、通院や治療にともなう負担の軽減が期待される。

 「DMEおよびnAMDは、成人の失明や視力低下の主原因のひとつであり、世界的な高齢化の進展にともない、罹患数の増加が見込まれています。ファリシマブは、眼科領域ではじめてのバイスペシフィック抗体であり、これらの疾患に新たな作用機序による治療選択肢をもたらすことを目指しています」と、同社では述べている。

Targeting Angiopoietin in retinal vascular diseases: A literature review and summary of clinical trials involving faricimab(Cells 2020年8月10日)
Simultaneous inhibition of angiopoietin-2 and vascular endothelial growth factor-A with faricimab in diabetic macular edema(American Academy of Ophthalmology 2019年3月21日)
Global prevalence and major risk factors of diabetic retinopathy(Diabetes Care 2012年3月)
中外製薬

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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