GLP-1受容体作動薬は体重減少と関係なくインスリン感受性を改善 DPP-4阻害薬では減量効果を得られず
GLP-1受容体作動薬が内因性GLP-1濃度の上昇と異なる方法で代謝効果をもたらす可能性
GLP-1受容体作動薬「リラグルチド」が、体重減少とは無関係にインスリン感受性を改善することを、肥満および前糖尿病(pre-diabetes)のある患者を対象に実施した試験で確認したと、米ヴァンダービルト大学医療センターが発表した。研究成果は、米国糖尿病学会(ADA)が刊行している「Diabetes」に掲載された。
「GLP-1受容体作動薬が、体重減少を促進することは知られているが、今回の試験では、体重減少とは関係なく、インスリン感受性を急速に改善する効果があることが示された。一方、DPP-4阻害薬であるシタグリプチンにより、内因性のGLP-1濃度は上昇したが、同様の効果は得られなかった」と、同センター糖尿病・内分泌・代謝部のMona Mashayekhi氏は述べている。
「GLP-1受容体作動薬は、内因性GLP-1濃度の上昇とは異なる方法で、重要な代謝効果をもたらしている可能性がある」としている。
研究グループは、肥満および前糖尿病のある患者88人を対象に、▼GLP-1受容体作動薬(リラグルチド)を投与する群、▼DPP-4阻害薬(シタグリプチン)を投与する群、▼それらに薬剤を使わず低カロリー食のみにより減量する群に無作為に割り付け、14週間の試験を行った。
さらに、治療中のGLP-1受容体作動薬の依存性効果を調査するために、混合食事試験中に、GLP-1拮抗薬であるエキセンディンとプラセボを、2対2のクロスオーバー試験として投与した。クロスオーバーにより、治療Aと治療Bのそれぞれに対する反応を同じ機序で比較できるとしている。
その結果、リラグルチド群では、治療開始から2週間以内に、体重減少の前にインスリン感受性の急速な改善と、血糖値の低下が示された。一方、シタグリプチン群では体重減少は示されなかった。
リラグルチド群では2週間後に、HOMAによるインスリン抵抗性(HOMA-IR)、更新HOMAモデル(HOMA2)、およびMatsuda Indexによって測定されたインスリン感受性の改善が認められた。リラグルチド群では、空腹時および食後の血糖値が低下し、インスリン、C-ペプチド、空腹時グルカゴンの値も低下した。
一方、シタグリプチン群では、インスリン感受性や空腹時血糖値が変わることなく、内因性GLP-1およびGIPの値が増加し、食後の血糖値およびグルカゴン値は減少した。とくに、シタグリプチン群では、体重が変化することなく、GIP値が増加したことに注意する必要があるとしている。
低カロリー食群の体重減少では、HOMA-IRおよびHOMA2によりインスリン感受性の改善がみられたが、Matsuda Indexは改善せず、血糖値は低下しなかった。
さらに、エキセンディンによる急性のGLP-1受容体拮抗作用により、すべての群で血糖値が上昇し、リラグルチドによる治療中にMatsuda Indexと空腹時グルカゴン値が増加し、リラグルチドおよびシタグリプチンによる治療中に内因性GLP-1値が増加した。これは、リラグルチドは、内因性GLP-1の増加によっては達成されない、体重減少に依存しない、インスリン感受性に対する、GLP-1受容体に依存する効果を発揮するためとみられる。
「GLP-1受容体作動薬は、強力な血糖降下作用と大幅な減量効果を考慮したタイプの薬剤であり、臨床での糖尿病と肥満の管理方法に変化をもたらした」と、Mashayekhi氏は述べている。
「過去の研究で、DPP-4阻害薬や食事療法ではなく、GLP-1受容体作動薬が心臓病と炎症を改善することが報告されている。これは、GLP-1受容体作動薬による治療で心血管疾患が減少したという臨床現場からの報告と一致する」としている。
研究グループは今後の予定として、ヒトでのGLP-1受容体作動薬の受容体依存性および体重減少依存性のそれぞれの効果について調査を続けるとしている。
Study shows liraglutide results in increased insulin sensitivity independent of weight loss (ヴァンダービルト大学医療センター 2024年1月4日)
Weight Loss–Independent Effect of Liraglutide on Insulin Sensitivity in Individuals With Obesity and Prediabetes (Diabetes 2023年10月24日)