SGLT2阻害薬「ジャディアンス」が左室駆出率が低下した心不全の治療薬として欧州で承認を取得

2021.06.30
 SGLT2阻害薬「ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)」が、左室駆出率が低下した心不全の治療薬として欧州で承認された。
 この適応拡大は、eGFRが20ml/min/1.73m²以上で、糖尿病合併の有無を問わず左室駆出率が低下した心不全(HFrEF)患者で、心血管死または心不全による入院の複合リスクがプラセボと比較して有意に25%低下することを示したEMPEROR-Reduced試験にもとづく。
 欧州では、心不全が入院の主な原因となっており、高齢化にともない有病率の増加が予測されている。

心血管死のリスク減少に関するデータが添付文書に記載されたはじめての2型糖尿病治療薬に

 ベーリンガーインゲルハイムとイーライリリー・アンド・カンパニーは、左室駆出率が低下した症候性慢性心不全(HFrEF)の成人患者の治療薬として、欧州委員会がSGLT2阻害薬「ジャディアンス(一般名:エンパグリフロジン)」を承認したと発表した。今回の適応拡大は、2021年5月20日の欧州医薬品庁(EMA)の医薬品委員会(CHMP)による肯定的見解を受けたもの。

 ジャディアンスは、1日1回経口投与のSGLT2阻害薬で、心血管死のリスク減少に関するデータが複数の国の添付文書に記載されたはじめての2型糖尿病治療薬となった。

 今回の承認は、ジャディアンスが心血管死または心不全による入院の複合リスクをプラセボと比較して有意に25%低下させることを示したEMPEROR-Reduced試験の結果にもとづく。主要評価項目に関する結果は、2型糖尿病合併の有無にかかわらず、サブグループ間で一貫していた。試験の重要な副次評価項目の解析から、ジャディアンスは心不全による入院の初回および再発のリスクをプラセボと比較して30%低下させるとともに、腎機能の低下を有意に遅らせることが明らかになった。

 EMPERORプログラムの治験医師を務めた、フランス・ロレーヌ大学の治療学名誉教授であるFaiez Zannad氏は、「本日の承認により、左室駆出率が低下した症候性慢性心不全を有する欧州の数百万人の患者さんに、重要な新しい治療選択肢を提供することが可能になります。このエンパグリフロジンのような新たな治療選択肢は、患者さんの命を救い、患者さんが病院にかかる時間を短縮して、ご家族と過ごす時間を増やすことを可能にするでしょう」と述べている。

 EMPEROR慢性心不全試験は、慢性心不全の臨床試験プログラムは、現在心不全の標準治療を受けている2型糖尿病合併または非合併の左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者または左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)患者を対象に、ジャディアンスの1日1回投与による治療をプラセボと比較検討する以下の2つの第3相無作為化二重盲検試験で構成される。

 EMPEROR-Reduced試験では、左室駆出率が低下した慢性心不全(HFrEF)の成人患者におけるジャディアンスの安全性と有効性を評価。主要評価項目は、判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間。

 EMPEROR-Preserved試験では、左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)の成人患者におけるジャディアンスの安全性と有効性を評価。主要評価項目は判定心血管死または判定HHF(心不全による入院)の最初の事象までの時間。

 心不全は、多くの場合、2型糖尿病や腎疾患などの心腎代謝系の疾患と関連している。これらの臓器は相互に関連しているため、ある臓器が改善すると、別の臓器にも好影響をもたらす可能性がある。心不全とは、心臓発作でよくみられる重篤な合併症であり、心臓が全身に十分な血液を送り出せない場合に生じる。心不全には、左室駆出率が低下した心不全と左室駆出率が保持された心不全の2つの形態があります。左室駆出率が低下した心不全とは、心臓が正常に収縮できない状態であり、左室駆出率が保持された心不全とは、心臓が十分に血液を溜められない状態をさす。心不全患者では、息切れや疲労感が生じることが多く、QOLに大きく影響する。

 「心不全管理の新たな1ページが始まり、現在は、今年予定されているEMPEROR-Preserved試験の結果を見据えています。この試験は、糖尿病合併の有無を問わず左室駆出率が保持された慢性心不全(HFpEF)患者さんで、ジャディアンスを評価する試験です」と、イーライリリー・アンド・カンパニーは述べている。

 なお、日本でのジャディアンス錠の効能・効果は2型糖尿病であり、心血管イベントおよび慢性心不全、腎臓病のリスク減少に関連する効能・効果は取得されていない。

Jardiance summary of opinion (post authorisation)(欧州医薬品庁(EMA) 2021年5月20日)
Cardiac and Renal Outcomes With Empagliflozin in Heart Failure(New England Journal of Medicine 2020年10月8日)
What is Heart Failure(American Heart Association)
Acute Myocardial Infarction(New England Journal of Medicine 2017年5月25日)
Warning Signs of Heart Failure(American Heart Association)

ジャディアンス錠10mg ジャディアンス錠25mg 添付文書 (医薬品医療機器総合機構)

ベーリンガープラス(日本ベーリンガーインゲルハイム)
日本イーライリリー

[ TERAHATA / 日本医療・健康情報研究所 ]

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