インスリンポンプ「ミニメド780G システム」とリアルタイムCGM「ガーディアン4 スマート CGM システム」を発売 糖尿病患者の生活に合わせたインスリン治療を実現 メドトロニック

2023.11.30
 日本メドトロニックは、日本初の基礎インスリンと補正インスリン両方の自動インスリン注入(AID)機能をもつ「アドバンス ハイブリッドクローズドループ(AHCL)」テクノロジーを搭載したインスリンポンプ「ミニメド780G システム」の承認を2023年2月に取得し、11月27日より販売を順次開始すると発表した。  また、血糖自己測定の回数をこれまでより減らして使用できるリアルタイムCGM(持続グルコースモニタ)「ガーディアン4 スマート CGM システム」も近日販売を開始する。

較正不要の自動インスリン注入 さらに進化したAHCL
糖尿病患者の個々の生活スタイルやニーズに合わせたパーソナライズ医療の実現に貢献

 メドトロニックの「アドバンス ハイブリッドクローズドループ(AHCL:Advanced Hybrid Closed Loop)」は、ハイブリッドクローズドループの基礎インスリンの自動調整機能に自動補正機能を追加したテクノロジーで、基礎インスリンの自動調整では抑えられない高グルコースに対しシステムが自動で補正インスリンを注入する。

 最大基礎レートに達し、センサグルコース値が120mg/dLを超えている場合、システムは5分毎に自動補正を実施。一時目標が設定されている場合は、自動補正は行われない。AHCL(スマートガード)機能は7歳以上が適応となっている。

 同社では「AHCLの登場により、さらに自動化されたインスリン注入が実現され、日々の血糖管理に負担を感じている方へ新たな選択肢が追加されます。日本メドトロニックでは、糖尿病と生きる患者さんが、"もっと楽に、もっと私らしく"活き活きとした毎日を送るために、さまざまなソリューションの提供を通じて、パーソナライズ医療の実現をめざしてまいります」と述べている。

ミニメド780G システム
販売名:メドトロニック ミニメド 700 シリーズ


医療機器承認番号:30300BZX00256000
ガーディアン4 スマート CGM システム
販売名:メドトロニック ガーディアン コネクト


医療機器承認番号:22900BZX00321000

ミニメド780G システム
新たに補正インスリンの自動投与機能を付加

 メドトロニックの「ミニメド780G システム」に搭載されたアドバンス ハイブリッド クローズドループ(AHCL)は、従来モデル(ミニメド770G システム)に搭載されていたHCL(ハイブリッドクローズドループ)の基礎インスリン自動調整機能に加え、新たに補正インスリンの自動投与機能が付加した新しいテクノロジー。

 HCLではセンサグルコース値に対して、5分毎に基礎インスリン量を自動で増減し調整するオート基礎により血糖マネジメントのサポートを行っている。それに対してAHCLは、このHCLのオート基礎に加え、自動補正として、最大基礎レートに達しSG値が120mg/dLを超えている場合に、システムが5分毎に自動で補正インスリンを注入する。なお、一時目標が設定されている場合は、自動補正は行わない。

 さまざまな要因により、血糖が上昇したときに必要となる補正インスリンを、連動するCGMの値に応じてインスリンポンプが自動で計算し、注入する。これにより、HCLだけでは十分に抑制できていなかった高血糖の予防・抑制が期待される。

 この自動補正機能の追加により、従来の基礎インスリン自動調整だけでは対応の難しかった一時的な高血糖イベントや食後高血糖に対応することが可能となり、より良いTIR(Time in Range)が期待されるとしている。

 また、ミニメド780Gは、「ガーディアン4トランスミッタ」「ガーディアン4センサ」と組み合わせて使用するが、1日に3~4回行ってきた定期的な較正を行う必要がなく、血糖測定にともなう穿刺の頻度を減らすことができるとしている。

 患者は高血糖に対し3回に1回は補正せず、2回に1回は補正インスリンの計算間違いが起こっているという海外の報告もある。新たに補正インスリンを自動投与する機能が追加されたことにより、インスリンポンプでの自動調整がされ、より患者にとって負担なく、高血糖イベントに対応することが可能になるとしている。

 また、従来のスマートフォンアプリとの連動に加え、Apple Watchにも対応している。CGMの値やアラートの発生を手元で確認でき、仕事中や運動中も、より簡単にご自身の状況を把握できる。インスリンの注入履歴やアラート・CGMデータはリアルタイムでクラウドに保存され、患者がいつでもアプリやApple Watchで振り返ることができ、血糖マネジメントに役立つ。こうしたデータはクラウドを通じて医療従事者にも随時共有されるため、いざという時にスムーズに対応できるだけでなく、通院時の診察の効率化も期待される。

 さらに新しい取り組みとして、現在ミニメド770Gシステム(HCL)を使用中の患者は、インスリンポンプ本体を交換することなく、専用のアプリを介して780Gにアップデートし、使用できるようになった。これは医療機関・患者双方の負担軽減や、機器本体交換不要による環境負荷の軽減など、多面的な効果が期待されるとしている。インスリンポンプの本体を交換せずに内部のプログラムをリモートでアップデートするこの方法は、これまでにない新しい取り組みだ。

ガーディアン4 スマート CGM システム
CGMの較正が不要のリアルタイムCGMシステム

 「ガーディアン4 スマート CGM システム」は、糖尿病患者自身による血糖自己測定回数の減少が期待されるリアルタイムCGM(持続グルコースモニタ)システム。従来のガーディアンコネクトと異なり、CGMの較正が不要となるため、較正のための血糖自己測定回数やアラート回数の減少による負担の軽減が期待される。

 リアルタイムCGMが測定しているのは、血糖値より遅れて変動する間質液中のグルコース濃度(センサグルコース値)であるため、この間質液で測定したセンサグルコース値を血糖値に近づけるため、これまでは定期的に実測血糖値を入力(CGMを較正)する必要があった。

 日本メドトロニックでは、「ガーディアン4 スマート CGMは、インスリンポンプを使用しない患者に対しても安心した生活の実現を支援します。最大60分前から高・低血糖傾向を予測しお知らせするアラート機能や、遠隔での医療者・家族の見守り機能と組み合わせることで、より便利で安心した生活の実現をサポートします。リアルタイムCGMデータを家族や友人、医師と共有した結果、89%の患者が安心感が向上したと回答する報告もあり、予測アラートと見守り機能の併用は患者のQOL向上に寄与することが期待されます」と述べている。

使用者の75%がHbA1c7%未満を達成 TIR(Time in Range)76%を達成

 1型糖尿病は、若年発症の割合が高く罹病期間が長い傾向があるため、生涯を通じて最適な治療法を選択しながら血糖を管理することが重要となる。しかし、日々の体調や運動量、心理状況、多様な食事パターンなど、さまざまな血糖変動の要因を考慮しながら、常に最適なインスリン量を考えて投与することは、患者にとって非常に大きな毎日の負担となっている。その結果、やむをえずインスリン治療に合わせて食事や運動のタイミングや量を調整せざるをえない場面もあり、これらの制約が生活の自由度を妨げることから、身体的・心理的な負担と感じる患者も少なくないと言われている。

 東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科教授の西村理明先生は、「ミニメド780G システム」「ガーディアン4 スマート CGM システム」の発売を受けて、次のように述べている。

 「高血糖に対して自動で補正ボーラスを注入する本テクノロジーは、海外では既に10万を超える患者で使用されています。本テクノロジー使用者のリアルワールドデータが発表されており、低血糖を予防しつつ、推定HbA1c6.7%(平均)、Time In Range76%(平均)を達成しているという結果が示されました。さらに、使用者の75%が治療目標であるHbA1c7%未満を達成していることから、本テクノロジーの使用により血糖管理の改善につながると期待しています。
 また国別に解析しても、結果に大きな差はなく、各国の生活や食文化、医療・保険制度の違いに影響されずに、本テクノロジーが血糖改善に寄与できることが示唆されており、日本でも同様の効果やより良い血糖管理をもたらすと予想します。
 このような新しいテクノロジーが、我が国に導入されるにあたり、是非、患者の経済負担に対して、他の先進国と同様な負担軽減制度が創設されることを、強く希望します。

 TIR(Time in Range)は、CGMによる測定期間中センサグルコース値がどの程度目標範囲内に入っているかを示す指標(%)で、「より良いTIR」とは、よりTIRの%が高いことをさす。TIRが高いほど低血糖時間・高血糖時間・血糖変動が短小であり、TIRが1%改善すると、24時間のうちの1%(14.4)分、この目標範囲を下回るまたは上回る時間が減少し目標範囲に収まる時間が延びたことを意味する。2019年米国糖尿病学会(ADA)より、「CGM使用時の1型および2型糖尿病の治療目標としてTIRを70mg/dLから180mg/dLとし、HbA1c7%の患者さんの場合は全体の70%の時間(CGMの測定地点)がこの域内に収まること」というガイドラインが発信された。なお、ピボタル試験でのミニメド780G システムのTIR達成率は75%であることが示されている。

 日本メドトロニックでは、次のように述べている。

 ついに日本の患者にもAHCLをお届けできる日が来たことを大変嬉しく思います。AHCLや較正不要といったミニメド780G システムの特徴は、1型糖尿病患者が、より少ない負担で自分らしい生活に合わせたインスリン治療を実現するためにお役に立てると考えています。ミニメド780G システムを安心して選んでいただけるよう、引き続きメドトロニックは患者をサポートするソリューションやサービスを提供し、1人ひとりの患者さんが、糖尿病と生きる生活をより充実したものにするお手伝いをしてまいります。
 糖尿病のない人と変わらない自由で安心・安全な生活の実現に寄与し、"インスリン治療に合わせた生活"から、"生活に合わせたインスリン治療"への転換に貢献し、日本全国どこでも、患者さん・ご家族・医療従事者が最適な治療法を選択できる環境の構築を追求してまいります。

日本メドトロニック

Safety and Glycemic Outcomes During the MiniMed™ Advanced Hybrid Closed-Loop System Pivotal Trial in Adolescents and Adults with Type 1 Diabetes (Diabetes Technology & Therapeutics 2022年3月14日)

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