新型コロナ発症者は糖尿病の新規発症率が高い 240万人の日本人のビッグデータを分析
新型コロナ陽性者は糖尿病発症率が高い 高齢者や男性で上昇
名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センターの平田晃正教授・センター長、小寺紗千子准教授らと、日本システム技術は、新型コロナと糖尿病の関連性について、レセプト(診療報酬明細書)のデータをベースとした約240万人の日本人のメディカルビッグデータを用いて分析した。
研究は、2018年4月~2019年3月に診療のあった患者のうち、2022年4月~2023年3月に診療の記録のない人を除いた241万3,031のデータを解析したもの。新型コロナの発症者と未発症者での、直近1年間に糖尿病の診療費用が発生した患者を取り除き、年代、性別ごとの糖尿病の発症率について分析した。
その結果、2020年度の第4波、第5波で新型コロナを発症した人は、60日以内に糖尿病診療を開始した割合が高いことが判明した。
新型コロナ陽性者のうち、2ヵ月以内に糖尿病を新規に発症した患者の比率は、2020年度は2.3%(140人)、第4波(2021年4月~5月)は3.2%(98人)、第5波(2021年7月~9月)は2.2%(178人)、第6波(2022年1月~3月)は0.2%(165人)、第7波(2022年7月~9月)は0.13%(235人)となった。
いずれも新型コロナ陽性になったことのない人では、糖尿病の新規発症は、2020年度は0.1%(23人)、第4波は0.05%(6人)、第5波は0.08%(33人)、第6波は0.07%(249人)、第7波は0.1%(739人)であり、いずれも新型コロナ陽性となった患者で糖尿病の新規発症率が高いことが示された。
新型コロナ陽性となり糖尿病を発症した患者は、年代が高いほどその発症率が高くなり、ほぼすべてがインスリン依存ではない2型(TYPE II)だった。また、第6波以降は発症率が減少する傾向がみられた。
糖尿病発症率のオッズ比は、新型コロナの第4波でもっとも高く、第4波と第5波ではとくに50代以上で高かったが、それ以降は低下傾向が示された。また男女別にみると、とくに2020年度と第4波では男性の発症率が高く、第4波では女性の発症率も高い傾向が示された。
2020年度と第4波で男性の発症率が高く、第4波では女性の発症率も高かった 男性 女性
研究者は、「新型コロナの波こどの年齢調整など、複数の因子が影響を与えており、完全にマッチングをとるのは困難」としながらも、「新型コロナ陽性となった患者は、陽性となったことのない患者より、糖尿病発症率が高いことが明らかになった。糖尿病発症率は、年代が高いほど高い傾向が示された。また、第4波の発症率がもっとも高く、以降は減少した傾向も示された」と述べている。
なお、分析に利用されたデータベースは、常に最新のデータを追跡し、その都度更新したうえで分析を実施しており、今後の分析結果は内閣官房のホームページに随時公開される予定としている。
名古屋工業大学先端医用物理・情報工学研究センター
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