3分の1以上がGLP-1受容体作動薬による治療を中止 糖尿病患者の中止率は36% 肥満症患者は過半数 米研究

2024.06.05
米国におけるGLP-1RA治療開始後の中止の実態

 米国でGLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)による治療を開始した糖尿病または肥満患者のうち、3分の1以上が12ヵ月でその治療を中止しているという実態が報告された。米エバーノース研究所のDuy Do氏らによる研究の結果であり、詳細は「JAMA Network Open」に5月24日、レターとして掲載された。

 この研究は、2021~2023年の医療情報データベース(Komodo Healthcare Map)を用いて行われた。解析対象は、2型糖尿病または肥満治療のために、医療保険(民間保険、メディケア、メディケイド)を利用してGLP-1RA(デュラグルチド、エキセナチド、リラグルチド、セマグルチド)の処方を受けた18歳以上の患者19万5,915人(平均年齢53.8±12.5歳、女性58.9%)。

 GLP-1RAの最初の処方日から3、6、12ヵ月後の処方状況を把握し、各時点から135日以内に再度GLP-1RAが処方されていなかった場合を、GLP-1RAの処方が中止されたケースと定義した。その間、処方が途切れていた期間があったとしても、断続的に続いていた場合は中止に含めなかった。

 なお、処方間隔が135日以内という設定は、処方期間の長い(90日)処方箋が全体の5.3%とわずかであり、その90日よりもさらに長く追跡することで、使用が中止に至ったことを厳格に判断するために設定された。

 解析の結果、GLP-1RAの中止率は、3ヵ月時点で26.2%、6ヵ月時点で30.8%、12ヵ月時点で36.5%と計算された。

 12ヵ月時点の中止率を治療目的別に見ると、肥満のみの患者に対するGLP-1RA処方での中止率が高かった。具体的には、2型糖尿病患者での中止率は35.8%、2型糖尿病と肥満の双方を有する患者での中止率は34.2%と、いずれも3分の1強であるのに対して、肥満のみの患者では50.3%と過半数を占めていた。

 ロジスティック回帰分析の結果、2型糖尿病のみの患者を基準として、肥満のみの患者の中止のオッズ比(OR)は1.79[95%信頼区間 1.74~1.85]、2型糖尿病と肥満を有する患者はOR 0.91[同 0.89~0.93]となった。

 性別に関しては、女性より男性で中止のオッズ比が高かった[OR 1.02 (同 1.00~1.04)]。年齢に関しては、35歳以上に比し18~34歳の若年層でオッズ比が高く、加入保険については民間保険よりメディケアやメディケイドの場合にオッズ比が有意に高かった。

 このほかに、消化器症状の出現[OR 1.04 (同 1.02~1.06)]や薬剤費自己負担額の高さ[1%高いごとにOR 1.02 (同 1.02~1.03)]も、中止率の高さと有意に関連していた。

 また、ベースラインで心不全[OR 1.09 (1.05~1.14)]や心血管疾患[OR 1.08 (1.05~1.11)]を有する場合にも、中止のオッズ比が有意に高かった。一方、慢性腎臓病[OR 1.03 (0.99~1.06)]は有意な関連がなかった。

 以上にもとづき著者らは、「GLP-1RAの中止には、使用目的の差異や人口統計学的因子が関連している」とまとめている。

 なお、研究の限界点として、肥満者での中止における減量効果の違いや副作用の関与の程度を詳細に検討できていないこと、および新規GLP-1RAであるチルゼパチドの処方ケースが評価されていないことを挙げている。

[HealthDay News 2024年5月29日]

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