糖尿病性腎臓病の新たな早期診断マーカーを発見 尿中アルブミンよりも早期の腎病態を反映 病態進行の予測マーカーにも利用可能
糖尿病性腎臓病の進行にともない、血清中にあるアルブミンの酸化修飾体「酸化型アルブミン」の値が上昇することを発見した。
現在の診断マーカーとして頻用される尿中アルブミンに比べ、酸化型アルブミンはより早期の腎病態を反映するとしている。
酸化型アルブミンが高値を示す患者では腎病態進行が早いことも分かり、病態進行の予測マーカーとしても利用できる可能性がある。研究成果は、米国糖尿病学会誌「Diabetes Care」に掲載された。
糖尿病性腎臓病の新たな早期診断マーカーに尿中アルブミンよりも早期の腎病態を反映
熊本大学などは、血清中の「システイン付加アルブミン(酸化型アルブミン)」が、糖尿病性腎臓病の新たな早期診断マーカーになりうるという研究を発表した。
現在の診断マーカーとして頻用される尿中アルブミンに比べて、血清中の酸化型アルブミンはより早期の腎病態を反映し、その上昇の程度が腎病態進行を予測する診断マーカーにもなるとしている。
糖尿病性腎臓病の診断には現在、尿中のタンパク質である尿中アルブミン測定が用いられているが、とくに2型糖尿病に由来する糖尿病性腎臓病にはアルブミン尿陰性例も多数含まれることから、こうした複雑多様な病態に対して新たな早期病態診断マーカーの開発が求められている。
研究では、257例の2型糖尿病患者の腎病態進行と血清アルブミンの翻訳後修飾体との関連について評価した。翻訳後修飾は、翻訳後のタンパク質の化学的な修飾で、その機能に重要な影響を与える。たとえば、血清アルブミンは半減期が約20日で、体内環境に応じてさまざまな翻訳後修飾を受ける。血清中糖化アルブミンはアルブミンの糖付加体であり、糖尿病患者の血糖コントロールの指標として実臨床で活用されている。
研究グループは、質量分析装置を用いて、5種の翻訳後修飾体を測定した。その結果、糖尿病性腎臓病の進行にともない、1分子のアルブミンに対して1分子のシステインが付加した酸化修飾体「システイン付加アルブミン(酸化型アルブミン)」の値が上昇することを発見した。
酸化型アルブミンは、腎病態の診断マーカーとなるだけでなく、尿中アルブミンに比べより早期の腎病態を反映する可能性がある。さらに、酸化型アルブミンが高値を示す患者では2年後の腎病態進行が早いことも示され、腎病態の進行を予測可能な診断マーカーとしても利用可能だとしている。
研究は、熊本大学大学院生命科学研究部の渡邊博志准教授、今福匡司博士(現:和歌山県立医科大学助教)、丸山徹教授らの研究グループが、同大学院生命科学研究部の鬼木健太郎准教授、猿渡淳二教授、陣内病院の陣内秀昭院長(熊本大学薬学部臨床教授)、吉田陽博士、あけぼのクリニックの松下和孝理事長、田中元子副院長(熊本大学薬学部臨床教授)、金沢大学の和田隆志理事・副学長(腎臓内科学)、東海大学医学部腎内分泌代謝内科の深川雅史教授らと共同で行ったもの。研究成果は、米国糖尿病学会誌「Diabetes Care」に掲載された。
熊本大学大学院生命科学研究部
Cysteinylated albumin as a potential biomarker for the progression of kidney disease in patients with type 2 diabetes(Diabetes Care 2021年4月26日)