新型コロナウイルスを世界最速の5分以内に検出
汎用的な感染症診断技術としての展開に期待
理化学研究所、東京大学、京都大学の研究グループは、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)由来のウイルスRNAを「1分子」レベルで識別して、5分以内に検出する革新的技術の開発に成功したと発表した。
研究成果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの超高感度・迅速診断装置の開発を含む、次世代の感染症診断法の核心技術としての応用展開が期待できるとしている。
現在、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の感染診断では、主にタンパク質抗原を検出する方法(抗原検査)とウイルスRNAを増幅して検出する方法(PCR検査)が利用されており、それぞれスクリーニング、確定診断など用途に応じて使い分けされている。
感染が疑われる場合、抗原検査を用いたスクリーニングが行われる。抗原検査は30分程度と迅速かつ簡便にウイルスを検出できるため、スクリーニングには適しているが、検出感度や特異度の低さに起因する検出エラーの多さが問題となっている。
一方、次のステージの確定診断として用いられているPCR検査では、専門的な技術や装置を用いて検体からRNAを精製し、さらに増幅の過程を経て検出にいたる。PCR検査は感度が優れ、確定診断に適しているが、検出の前処理に最短で1時間程度がかかること、また増幅に起因する検出エラーも発生することから、大量の検体を迅速に解析し、診断につなげることが困難だ。
そのため、PCR検査の「感度の高さ」と抗原検査の「迅速・簡便さ」を両立させた新しいウイルス検出法の開発が急務とされている。
理化学研究所 開拓研究本部 渡邉分子生理学研究室
東京大学 先端科学技術研究センター
京都大学 ウイルス・再生医科学研究所
Amplification-free RNA detection with CRISPR-Cas13(Communications Biology 2021年4月19日)