【新型コロナ】アストラゼネカ製COVID-19ワクチンはベネフィットが上回ると結論 「血栓症は根拠なし」 英国医薬品・医療製品規制庁と欧州医薬品庁
同ワクチンによる静脈血栓の発症率が、ワクチン接種を受けていない場合に想定される発症率を上回るという根拠はないと結論。
現在までに英国では、同ワクチン接種を受けた100万人に1人未満で血栓症が報告されている。
アストラゼネカのCOVID-19ワクチンは「ベネフィットがリスクを上回る」
英国医薬品・医療製品規制庁(MHRA)および欧州医薬品庁(EMA)は3月18日に、アストラゼネカの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチン「COVID-19 Vaccine AstraZeneca」について、ベネフィットがリスクを上回ることを再確認したと発表した。
MHRAは3月18日に、1,100万人を超える英国の同ワクチン被接種者にみられた少数の血栓塞栓性イベントのレビューを発表した。MHRAは「COVID-19予防における同ワクチンのベネフィットはリスクを上回っており、接種機会があれば人々は引き続きワクチンを接種すべきである」との見解を示した。
MHRAは厳密な科学的レビューを経て、同ワクチンによる静脈血栓の発症率が、ワクチン接種を受けていない場合に想定される発症率を上回るという根拠はないと結論付けた。
英国で報告された、まれな血栓症である血小板の減少をともなう脳静脈洞血栓症に関する5件の症例については、詳細なレビューが進行中。この症例は現在までに英国でワクチン接種を受けた100万人に1人未満において報告されており、自然に発症する可能性もあるため、ワクチンとの因果関係は確立されていない。
また、EMAのファーマコビジランス・リスク評価委員会(PRAC)は同日、同ワクチンによる血栓(血栓塞栓症イベント)の全体的な発症リスクの増加はなかったと結論付けた。
一方で、PRACは「血小板の減少をともなう重篤な血栓塞栓症イベントの非常に稀な症例に関しては、同ワクチンとの因果関係は証明されていないものの、その可能性はあり、さらなる分析に値する」と結論付けた。同ワクチンの特定のバッチ、あるいは特定の製造拠点に関連する問題を裏付ける根拠はなかった。
なお、アストラゼネカによると、同ワクチンの数千万件におよぶ記録に関する同社の安全性データベースを分析したところ、これらイベントの発症率は数百万人で予想される発症率を上回るものであることは示されなかった。
「COVID-19 Vaccine AstraZeneca」は、オックスフォード大学とそのスピンアウト企業Vaccitechによって共同で発明された。同ワクチンは、複製できないように処理をした弱毒化されたチンパンジー由来の風邪のアデノウイルスに、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の遺伝物質を含んだもの。ワクチン接種後、表面スパイクタンパク質が産生され、免疫系を刺激して、後に体が感染した場合にSARS-CoV-2ウイルスを攻撃する。
同ワクチンは、6大陸70カ国以上で条件付き販売承認もしくは緊急使用が付与されており、世界保健機構(WHO)により最近付与された緊急使用リスティング(EUL)により、COVAXファシリティ経由で最大142ヵ国におけるアクセスへの経路が加速される見込み。
同ワクチンは3月23日現在、日本では承認されていない。
UK regulator confirms that people should continue to receive the COVID-19 vaccine AstraZeneca(英国医薬品・医療製品規制庁 2021年3月18日)
COVID-19 Vaccine AstraZeneca: benefits still outweigh the risks despite possible link to rare blood clots with low blood platelets(欧州医薬品庁 3月18日)