SGLT2阻害薬「フォシーガ」が、心血管疾患の既往の有無に関わらず、慢性腎臓病患者の心血管および腎臓への効果を示す
2020.11.27
アストラゼネカは、SGLT2阻害薬「フォシーガ」(一般名:ダパグリフロジン)の、第3相DAPA-CKD試験の新たなサブグループ解析で、心血管疾患既往の有無に関わらず、糖尿病合併および非合併の慢性腎臓病患者の腎機能の悪化、心血管死または腎不全による死亡による主要複合評価項目を、プラセボと比較して39%低下させたと発表した。ベースライン時に心血管疾患既往のある患者および既往のない患者の絶対リスク低下は、それぞれ6%および5%だった(交互作用のp値=0.90)。
リスクの高い患者群で、腎不全への進行・心血管死・心不全による入院のリスクを低下、生存期間を延長
DAPA-CKD試験は、2型糖尿病合併の有無に関わらず、慢性腎臓病ステージの2~4、かつ、アルブミン尿の増加が確認された4,304例の慢性腎臓病患者を対象に、ダパグリフロジン10mg投与による有効性と安全性をプラセボと比較検討した、国際多施設共同無作為化二重盲検比較試験。ダパグリフロジンは1日1回、慢性腎臓病の標準治療に追加投与された。 今回のサブグループ解析は、ベースライン時に心血管疾患既往のない患者(一次予防の患者:試験参加者の37.4%)および既往のある患者(二次予防の患者:試験参加者の62.4%)を対象に、試験の主要評価項目である腎機能の悪化、心血管死または腎不全による死亡、ならびに副次評価項目を評価したもの。 ベースライン時で、二次予防患者は、一次予防患者より高齢で、男性、喫煙者が多く、平均収縮期血圧とBMIが高い特徴があった。加えて、心血管疾患既往のある患者は、既往のない患者よりも2型糖尿病を有する割合が高い傾向があった。出典:アストラゼネカ、2020年
慢性腎臓病患者は、全死亡を含む有害な心血管および腎イベントのリスクが高いことが知られている。「今回の解析の結果より、もっともリスクの高い患者群であっても、腎不全への進行、心血管死、心不全による入院のリスクの低下、ならびに生存期間の延長という、ダパグリフロジンによる一貫した効果があることが示されました」と、英国グラスゴー大学循環器医学研究所心臓血管研究センター、DAPA-CKD試験実行委員会の委員のJohn McMurray氏は述べている。
今回の結果は、2020年米国心臓協会学術集会で発表され、「Circulation」に掲載された。DAPA-CKD試験の結果は今年8月に公表され「The New England Journal of Medicine」に掲載された。
DAPA-CKD試験では、ダパグリフロジンは、腎機能の悪化もしくは心血管死または腎不全による死亡(eGFRの50%以上の持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、腎不全による死亡)による主要複合評価項目を、プラセボと比べて39%低下させたことが示されている(中央値2.4年の試験で絶対リスク減少[ARR]=5.3% p値<0.0001)。この結果は、2型糖尿病合併の有無に関わらず一貫していた。
DAPA-CKD試験では、ダパグリフロジンはまた、全死亡死因を含む全ての副次評価項目(腎機能の複合評価項目であるeGFRの50%以上の持続的低下、末期腎不全への進行、腎不全による死亡、心血管死または心不全による入院による複合評価項目)を達成し、全死因死亡のリスクをプラセボに比べて31%低下させた(ARR = 2.1%, p=0.0035)。
なお、ダパグリフロジンは、米国で2020年10月に2型糖尿病合併の有無に関わらない慢性腎臓病を対象に、ブレークスルーセラピーに指定された。なお日本では、ダパグリフロジンは、慢性腎臓病を効能・効果とする承認は取得していない。
Effect of Dapagliflozin on Clinical Outcomes in Patients with Chronic Kidney Disease, With and Without Cardiovascular Disease(Circulation 2020年11月13日)Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease(The New England Journal of Medicine 2020年10月8日)
フォシーガ錠5mg フォシーガ錠10mg 添付文書 (アストラゼネカ)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]