【新型コロナ】COVID-19では高齢、慢性腎臓病に加え、高尿酸血症・痛風が死亡のリスクに 首都圏345症例の解析により解明
2020.09.24
慶應義塾大学は、日本でまとまった症例数の報告がなかった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関して、首都圏の市中感染300例以上を対象に行ったはじめての解析を発表した。
COVID-19で死亡にいたる危険因子として、すでに報告されている高齢、慢性腎臓病に加え、高尿酸血症が関与していることをはじめて示した。
COVID-19で死亡にいたる危険因子として、すでに報告されている高齢、慢性腎臓病に加え、高尿酸血症が関与していることをはじめて示した。
6月中旬までにCOVID-19で入院した全患者345例を調査
慶應義塾大学の研究グループ(K-CORC)は、は、同大学グループ内の14病院に2020年6月中旬までに入院した全患者345例の基礎情報、入院時の症状、併存疾患などを調査した。さらに、酸素吸入を要する重症化の危険因子や、死亡に至る危険因子の解析を行った。 今回の研究は各施設のCOVID-19全例登録により集積したデータにもとづいたもので、首都圏の第一波の流行時の入院症例のリアルワールドを反映していると考えられる。 345例の年齢中央値は54歳で、男性が198例(57.4%)を占めた。併存疾患は、高血圧症が90例(26.1%)と最も多く、次に糖尿病(48例[13.9%])、高尿酸血症(28例[8.1%])と続いた。 症状では、発熱(252例[73.0%])が最も多く、咳嗽(166例[48.3%])、全身倦怠感(133例[39.5%])と続いた。死亡にいたる危険因子として新たに高尿酸血症(痛風)を同定
その結果、酸素吸入を必要とした重症化患者は112例(32.5%)で、死亡例は23例(6.7%)だった。 酸素吸入が必要となるほど重症化した例で危険因子を調べたところ、上位より、▼慢性閉塞性肺疾患(COPD)の併存症、▼入院中の症状としての意識障害、▼息切れ、▼全身倦怠感、▼高血圧症の併存症、▼高齢が関与していることが明らかになった。 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称で、タバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性の病気。日本では40歳以上の人口の8.6%、530万人がいると推定されている。 さらに、死亡にいたる危険因子として、これまでの報告と同じように、▼高齢、▼慢性腎臓病が示された。それにに加えて、新たに▼高尿酸血症(痛風)が関わっていることが分かった。出典:慶應義塾大学医学部内科学教室、2020年
首都圏での感染状況のリアルワールドを反映
これまで日本からのCOVID-19のまとまった症例数の報告は、クルーズ船(ダイヤモンドプリンセス号)乗船者に関係した100例前後の報告が数件と、神奈川県内6医療機関の151例の報告のみだった。今回の調査では、日本ではじめてクルーズ船に関係しない市中感染の300例以上の大規模な症例検討を行い、重症化や死亡の危険因子を示した。 「各施設がCOVID-19で入院した全症例を登録していることから、日本のCOVID-19流行第一波における首都圏での感染状況のリアルワールドを反映した意義のある研究であると考えられます」と、研究者は述べている。 研究は、慶應義塾大学医学部内科学教室(呼吸器)(福永興壱教授、石井誠准教授)と慶應義塾大学関連病院で構成する研究グループ(K-CORC)によるもの。研究成果は、国際科学誌「Journal of Infection」オンライン版に掲載された。サイトカインストームによる炎症増幅が死亡リスクを上昇?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、またたく間に日本を含むアジア、欧州、北南米、アフリカと、全世界に感染が拡大した。2020年9月16日時点で、世界での罹患者は2,900万人超、死者は93万人を超えている。 日本でも、新規患者数が再度増加し第二波を迎え、そのピークも越えたとみられているが、WHOをはじめとする感染症・公衆衛生学の専門的見解によると、このパンデミックは当面の間は続き、今後も流行を繰り返すことは必至の状況といえる。 なお、8月上旬に発表された、国立国際医療研究センターが主導するレジストリの2,600例超の中間解析の報告によると、酸素を必要とした重症化患者は29.7%で、死亡率は7.5%だった。 同センターの調査では、重症化しやすい症例として、▼男性、▼高齢者、▼喫煙者、▼併存疾患(心血管系、糖尿病、COPD)が挙げられたが、統計的有意差の検定は行われていない中間報告であり、COVID-19の重症化の因子が何であるかは、今後の解析結果が待たれていた。 国立感染研究所疫学センターの国内流行ごく早期の3月までの患者を対象とした解析でも、高尿酸血症/痛風が危険因子である可能性が指摘されている。この解析の症例は約半数がクルーズ船あるいは海外での感染事例だったが、今回の解析では、日本の市中感染での重症化リスクがはじめて明らかにされた。 研究グループは、高尿酸血症(痛風)がCOVID-19重症化の危険因子となるメカニズムについて、この疾患があることで、COVID-19の重症化の鍵とされるサイトカインストームを通じた過剰な炎症がさらに増幅されて、死亡リスクが上昇した可能性を指摘している。 「今後、第二波の以降の症例も合わせて集積を継続し、臨床基礎情報に加え、採血データ、CT画像情報、治療内容の検討も行っていきます」と、研究グループでは述べている。 慶應義塾大学医学部内科学教室慶應義塾の新型コロナウイルス関連 研究活動報告(慶應義塾大学)
慶應ドンネルプロジェクトチーム
Clinical characteristics of 345 patients with coronavirus disease 2019 in Japan: a multifigure retrospective study(Journal of Infection 2020年9月10日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]