【新型コロナウイルス】最短40分で判定できる迅速診断法を開発 国産ゲノム編集ツールを応用 東大医科学研究所
2020.06.05
東京大学医科学研究所は、国産のゲノム編集技術「CRISPR-Cas3」により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を最短40分で判定できる迅速診断法を開発したと発表した。
最短40分で試験紙による正確な診断が可能に
この新しいCRISPR検査法は、PCR検査法とほぼ同等の高い検出感度をもち、一般的な試薬、試験紙と保温装置だけで検出できるため、医療現場などのさまざまな場所で「素早く、安く、確実に」COVID-19診断を行うことが可能になる。 研究グループは、この検査法をPOCT(臨床現場即時検査)として使用できるCOVID-19迅速診断薬として早急に実用化したいとしている。 研究は、東京大学医科研究所先進動物ゲノム研究分野の吉見一人講師、真下知士教授らが、同研究所のウイルス感染分野や理化学研究所放射光科学研究センターと共同で行ったもの。 現在、COVID-19の診断に使われているPCR検査は、専門的な技術や解析機器が必要なため、臨床現場で実施することが難しく、特定の検査機関のみで実施されている。一方、抗原検査は30分程度と迅速にウイルスを検出することができるものの、検出感度が低くまた特異度も高くないため、偽陽性や偽陰性が多いという問題がある。 研究グループは、これらの従来の検査法の欠点を補う新たな検査法として、CRISPR検査法を開発した。この検査法を用いて、SARS-CoV-2のウイルスRNAを用いて検査を行った結果、数十個程度のサンプルでも、最短40分以内に試験紙で検出することに成功した。 実際にCOVID-19陽性患者10例、陰性者由来サンプル21例の鼻腔ぬぐい液サンプルを用いて診断を実施した結果、陽性一致率(PPA)は90%(9例/10例)、陰性一致率(NPA)は95.3%(20/21例)を示したことから、高精度にSARS-CoV-2を検出できることが分かった。 「CRISPR-Cas3」は、複数タンパク質の複合体でDNAを人工的に切断する国産ゲノム編集ツールとして、2019年に開発された。今回開発した微量な核酸の検出法は「CONAN法」は、狙った配列を認識するCRISPR-Cas3タンパク質と検出用DNAプローブの混合液をバイオセンサーとして利用することで、サンプル中の標的配列の有無を正確に検出することができる。 この手法は、一般的な試薬、試験紙と保温装置だけで検出できるため、野外や医療現場、空港などのPOCT検査薬として、迅速かつ低コストで簡単に診断できる。 また、CRISPR-Cas3は1塩基の違いも検出できるため、薬剤耐性や重症化を導く変異がウイルスに生じた際にも即座に検出法を確立することができるという。 今後は、バイオベンチャー企業であるC4Uを通じてキット化し、医療現場で簡易的に使用できるCOVID-19迅速診断薬として早急に実用化することを目指すとしている。 東京大学医科研究所 先進動物ゲノム研究分野Rapid and accurate detection of novel coronavirus SARS-CoV-2 using CRISPR-Cas3(medRxiv 2020年6月2日)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]