インスリン製剤は「前回の注射箇所から少なくとも2~3cm離す」 インスリン製剤の添付文書が改訂

2020.06.05
 糖尿病の治療に用いるインスリン製剤を、同じ部位ばかりに注射するのは避けるべきだ。厚生労働省は、インスリン製剤の注射箇所を「少なくとも前回の注射箇所から2~3cm離す」ことや、注射箇所に腫瘤(しこりやこぶなど)や硬結(硬くなること)がみられた場合は、「その箇所への注射を避ける」ことなどを、インスリン製剤の添付文書に表記することを求めた。

インスリンを注射する箇所の皮膚病変に注意

 インスリン製剤の多くで、体の同一箇所へ繰り返し注射することで、注射箇所に「皮膚アミロイドーシス」また「リポジストロフィー」があらわれることがあるのが判明した。

 皮膚アミロイドーシスは、皮膚にアミロイド(線維状の異常タンパク質)の沈着がみられる疾患。リポジストロフィーは、注射部位などに脂肪組織の異常が起こる疾患。これらは、長く同じ部位ばかりに注射していると起こりやすくなる。

 皮膚アミロイドーシスまたはリポジストロフィーがあらわれた箇所にインスリン製剤を投与した場合、「吸収が妨げられ十分な血糖コントロールが得られなくなることがある」。

 厚生労働省は5月19日に「『使用上の注意』の改訂について」を発出し、製薬メーカーに対しこうした点について添付文書の改訂を指示するとともに、医薬関係者へ情報を提供し必要な措置を講ずることを求めている。

 注射箇所は「少なくとも前回の注射箇所から2~3cm離す」ことや、注射箇所に「腫瘤や硬結」がみられた場合は、「その箇所への注射を避けること」といった処置が必要になる。

 血糖コントロールの不良が認められた場合には、医師に相談した上で、「注射箇所の腫瘤や硬結の有無を確認し、注射箇所の変更とともに投与量の調整を行うなどの適切な処置」を行う必要が出てくる場合がある。

 過去には、血糖コントロールの不良にともない、過度に増量されたインスリン製剤が正常な箇所に投与されたことにより、低血糖に至った例が報告されている。

使用上の注意の改訂指示内容

「重要な基本的注意」の項に、次の内容を追記する 改訂案
重要な基本的注意

同一箇所への繰り返し投与により、注射箇所に皮膚アミロイドーシス又はリポジストロフィーがあらわれることがあるので、定期的に注射箇所を観察するとともに、以下の点を患者に指導すること。
・ 本剤の注射箇所は、少なくとも前回の注射箇所から2~3cm離すこと。
・ 注射箇所の腫瘤や硬結が認められた場合には、当該箇所への投与を避けること。

皮膚アミロイドーシス又はリポジストロフィーがあらわれた箇所に本剤を投与した場合、本剤の吸収が妨げられ十分な血糖コントロールが得られなくなることがある。血糖コントロールの不良が認められた場合には、注射箇所の腫瘤や硬結の有無を確認し、注射箇所の変更とともに投与量の調整を行うなどの適切な処置を行うこと。血糖コントロールの不良に伴い、過度に増量されたインスリン製剤が正常な箇所に投与されたことにより、低血糖に至った例が報告されている。
【バイアル製剤の場合】
インスリン含有単位(UNITS)と液量の単位(mL)を混同することにより、誤ったインスリン量を投与する可能性がある。本剤を調製又は投与する場合は、「単位」もしくは「UNITS」の目盛が表示されているインスリンバイアル専用の注射器を用いること。
ただし、持続皮下インスリン注入療法(CSII療法)に用いる場合は、ポータブルインスリン用輸液ポンプの取扱説明書に記載された器具を用いること。

対象となるインスリン製剤

一般名販売名承認取得者
(1)インスリン ヒト(遺伝子組換え)ノボリンR注100単位/mL、同R注フレックスペン
ノボリン30R注フレックスペン、イノレット30R注
ノボリンN注フレックスペン
ノボノルディスク
ヒューマリンR注100単位/mL、同R注カート、同R注ミリオペン
ヒューマリン3/7注100単位/mL、同3/7注カート、同3/7注ミリオペン
ヒューマリンN注100単位/mL、同N注カート、同N注ミリオペン
日本イーライリリー
(2)インスリン リスプロ(遺伝子組換え) ヒューマログ注100単位/mL、同注カート、同注ミリオペン、同注ミリオペンHD
ルムジェブ注100単位/mL、同注カート、同注ミリオペン、同注ミリオペンHD
日本イーライリリー
(3)インスリン リスプロ混合製剤-25 ヒューマログミックス25注カート、同ミックス25注ミリオペン
(4)インスリン リスプロ混合製剤-50 ヒューマログミックス50注カート、同ミックス50注ミリオペン
(5)インスリン アスパルト(遺伝子組換え) ノボラピッド30ミックス注フレックスペン、同30ミックス注ペンフィル
ノボラピッド50ミックス注フレックスペン
ノボラピッド70ミックス注フレックスペン
ノボラピッド注100単位/mL、同注フレックスタッチ、同注フレックスペン、同注イノレット、同注ペンフィル
フィアスプ注100単位/mL、同注フレックスタッチ、同注ペンフィル
ノボノルディスク
(6)インスリン グラルギン(遺伝子組換え) ランタスXR注ソロスター
ランタス注100単位/mL、同注カート、同注ソロスター
サノフィ
(7)インスリン デテミル(遺伝子組換え) レベミル注フレックスペン、同注イノレット、同注ペンフィル ノボノルディスク
(8)インスリン グルリジン(遺伝子組換え) アピドラ注100単位/mL、同注カート、同注ソロスター サノフィ
(9)インスリン デグルデク(遺伝子組換え) トレシーバ注フレックスタッチ、同注ペンフィル ノボノルディスク
(10)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)[インスリン グラルギン後続1] インスリン グラルギンBS注カート「リリー」、同BS注ミリオペン「リリー」 日本イーライリリー
(11)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)[インスリン グラルギン後続2] インスリン グラルギンBS注キット「FFP」 富士フイルム富山化学
(12)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)・インスリン アスパルト(遺伝子組換え) ライゾデグ配合注フレックスタッチ ノボノルディスク
(13)インスリン デグルデク(遺伝子組換え)・リラグルチド(遺伝子組換え) ゾルトファイ配合注フレックスタッチ ノボノルディスク
(14)インスリン グラルギン(遺伝子組換え)・リキシセナチド ソリクア配合注ソロスター サノフィ
(15)インスリン リスプロ(遺伝子組換え)[インスリン リスプロ後続1] インスリン リスプロBS注100単位/mL HU「サノフィ」、同BS注カートHU「サノフィ」、同BS注ソロスターHU「サノフィ」 サノフィ

「使用上の注意」の改訂について(厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課2020年5月19日)
医薬品医療機器総合機構 医薬品 - 注意喚起情報 - 使用上の注意の改訂

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