【新型コロナウイルス】PCR検査時間を半減し精度も向上した「検出試薬キット」を発売 島津製作所
2020.04.16
島津製作所は、PCR法(遺伝子増幅法)による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検査時間を半分にした「新型コロナウイルス検出試薬キット」を4月20日に発売すると発表した。
鼻咽頭拭い液などの試料をRNAを精製することなく
簡単な前処理だけで使用できる
PCR法による新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の検出では、鼻咽頭拭い液などの試料(検体)からRNAを抽出して精製する煩雑な作業が必要で、これが多数の試料を迅速に検査する際の妨げになっていた。
「新型コロナウイルス検出試薬キット」は、RNAの抽出・精製工程が省けるため、検査に要する人手を大幅に削減でき、かつ2時間以上かかっていたPCR検査の全工程を従来の半分である約1時間に短縮できる。
96検体用PCR装置を用いて、96検体を検査した場合でも、1時間半以内(処理液の混合に15分、加熱処理に5分、PCRに65分で計85分)で行える。また、煩雑なRNA抽出作業も不要で、試料は処理液と混合し加熱するだけで済むので、人手を低減でき、人為的なミスの防止にもつながる。
同キットには必要な試薬が全て含まれており、すぐにPCR検査を実施でき、試薬および試料の調製、前処理(加熱)、反応、検出という全工程を完了できる。
同キットの開発は、同社独自のAmpdirect技術をベースに、国立感染症研究所のマニュアルにそって行った。この技術は「生体試料に含まれるタンパク質や多糖類などのPCR阻害物質の作用を抑制できるため、DNAやRNAを抽出・精製することなく、生体試料をPCRの反応液に直接添加できる」というものだ。
この技術により、腸管出血性大腸菌やサルモネラ属菌、赤痢菌、ノロウイルスなどの病原体検出試薬を開発しており、今回の新型コロナウイルス検出試薬キットの開発にも適用された。
検査精度の向上もはかられている。誤操作などにより、陽性にもかかわらず遺伝子増幅が起きなかった場合に誤って陰性と判断しないよう、同キットの反応液には、増幅工程が正しく進んだことを確認するための参照成分が添加されている。これにより、偽陰性が生じる可能性を低減し、検査結果の精度向上を期待できる。
なお、同キットは研究用試薬であり、現時点では医薬品医療機器法にもとづく体外診断用医薬品としての承認・認証などは受けていない。
ただし、国立感染症研究所が定めた評価方法で性能を検証し、保険適用の対象となる「臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV遺伝子検査法について」(2020年4月9日版)に記載されており、評価における陽性一致率、陰性一致率はいずれも100%だった。
100検体分の検査が可能な1キット当たりの価格(税抜)は22万5,000円で、月間生産量は10万検体分。当面は国内販売のみだが、5月以降の海外輸出を視野に入れている。
新型コロナウイルス検出試薬キット(島津製作所)臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV 遺伝子検査方法について(厚生労働省健康局結核感染症課、国立感染症研究所)
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]