2型糖尿病治療薬「SGLT2阻害薬」の肝臓での糖産生に与える影響はインスリン抵抗性の有無で異なる

2020.01.30
 金沢大学は、2型糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬の肝臓での糖産生に対する作用は、インスリン抵抗性の有無で異なることを発見したと発表した。
 肥満マウスにSGLT2阻害薬を長期的に投与すると、インスリン抵抗性が改善し、肝臓での糖産生応答が正常化したという。

SGLT2阻害薬が肝蔵での糖産生に与える影響を解明

 研究は、金沢大学新学術創成研究機構の稲葉有香助教らの研究グループによるもの。その成果は国際学術誌「Endocrinology」オンライン版に掲載された。

 2型糖尿病における高血糖の発症には、肝蔵での糖産生の亢進が、重要な役割を果たしている。2型糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、腎臓からの糖の排泄を促進することで、インスリン非依存的に血糖値を下げる薬剤だが、肝臓での糖産生を増加させることが報告されている。

 肝蔵での糖産生が亢進した2型糖尿病・肥満病態へのSGLT2阻害薬の投与が、なぜ肝糖産生をさらに増加させるのか、詳しい機序は分かっていなかった。

 そこで研究グループは、肝臓での糖産生応答を簡易的に観察することができるモニターマウスを作成し、健常マウスと肥満マウスのそれぞれにSGLT2阻害薬を投与することで、肝臓での糖産生にどのような影響をもたらすのかを検討した。

 その結果、インスリン抵抗性がない健常マウスでは、SGLT2阻害薬の単回投与により、肝臓の糖産生応答が増強した。一方、インスリン抵抗性を示す肥満マウスは、異常に強い肝糖産生応答を示したが、SGLT2阻害薬の単回投与による肝糖産生応答のさらなる増強はみられなかった。

 さらに、肥満マウスにSGLT2阻害薬を長期的に投与すると、インスリン抵抗性が改善し、肝臓での糖産生応答が正常化した。

 こうしてSGLT2阻害薬の肝臓での糖産生に対する作用は、インスリン抵抗性の有無で異なることが示された。このことは、肝糖産生が増加した2型糖尿病患者に対する治療薬として、SGLT2阻害薬が効果的な薬剤であることを示唆している。

 また、今回作成した肝糖産生のモニターマウスは、簡易的に肝糖産生を観察することが可能なモデルであり、今後の糖尿病研究への貢献が期待されるとしている。
金沢大学新学術創成研究機構
Hepatic Gluconeogenic Response to Single and Long-Term SGLT2 Inhibition in Lean/Obese Male Hepatic G6pc-Reporter Mice(Endocrinology 2019年9月13日)

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