難治性の傷を治す「シルクエラスチン」を開発 糖尿病性皮膚潰瘍などの慢性創傷に有効 産官学連携で医師主導の治験を実施
2020.01.22
京都大学などは、難治性の傷を治す人工タンパク質「シルクエラスチン」を開発したと発表した。産官学連携で医師主導の治験を行い、糖尿病性皮膚潰瘍などの治りにくい創傷に対して有効な材料であることを確認した。
「シルクエラスチン」が細菌感染を助長せず、傷を治す力を増強
産官学連携で医師主導治験を実施し、企業治験へ進展
研究は、京都大学大学院医学研究科形成外科学講座の野田和男助教らと三洋化成工業が共同で、日本医療研究開発機構(AMED)医療分野研究成果展開事業 産学連携医療イノベーション創出プログラム(ACT-M)などの支援のもとに行ったもの。
近年、糖尿病患者の増加あるいは高齢化にともない、糖尿病性皮膚潰瘍などに代表される治りにくい創傷(慢性創傷)の増加が問題になっている。慢性創傷ではさまざまな原因で治癒が遅れ、細菌に感染し、さらに治癒が遅れる悪循環に陥りやすい。
やけどやケガ、皮膚がんの切除などで皮膚が欠損した場合、傷を治す力があれば、通常の治療で治る。しかし、傷を治す力がない傷(難治性皮膚潰瘍)では、治るのに長い時間がかかる、あるいは治らないことが問題になる。
難治性皮膚潰瘍の原因としては糖尿病、静脈還流うっ滞、膠原病などがある。これを治すためには、傷を乾燥させず(湿潤を保ち)、かつ細菌感染を起こさないように、毎日傷を洗い、傷を治す軟膏を使用したり、被覆材を貼り替える必要がある。数日間そのまま交換しなければ、細菌が増えて感染が起こる。
研究グループが開発に成功した「シルクエラスチン」は、シルクフィブロインの部分配列とエラスチンの部分配列とを組み合わせ、遺伝子組み換え技術によって作製された人工タンパク質。シルクフィブロインは、カイコが産生する繊維状のタンパク質であり、シルクの原料になる。
課題名:革新的タンパク質シルクエラスチンを用いた創傷治癒材の開発及び事業化
研究者:三洋化成工業株式会社、国立大学法人京都大学、広陵化学工業株式会社
期間:2020年1月~2022年3月(予定)
計画:医師主導治験をベースとした企業治験の実施
ユーザビリティ性の高い製品形態の設計(容器や包装資材の設計等)
商用生産に向けた量産化検討(スケールアップ検討や収率向上検討等) 京都大学大学院医学研究科形成外科学
京都大学医学部附属病院臨床研究総合センター
三洋化成工業株式会社
[Terahata / 日本医療・健康情報研究所]