「郡山市における糖尿病対策に係る共同研究」の結果 ノボ、郡山市、福島県立医科大学 治療中断者は糖尿病への理解や認識が不足している

2020.01.16
 ノボ ノルディスク ファーマは、福島県郡山市および福島県立医科大学と産学官連携で取り組んできた、「郡山市における糖尿病対策についての共同研究」の結果を発表した。

糖尿病の治療中断に影響を及ぼす要因を探る

 共同研究は、「郡山市を日本一健康な都市にする」という理念の下に、郡山市民の健康増進を図ることを目的に、2018年2月に福島県郡山市とノボ ノルディスク ファーマが締結した「糖尿病対策に関する包括連携協定」にもとづき、2018年8月にデータ統計分析などについて医学的助言や指導を得るため福島県立医科大学(医学部衛生学・予防医学講座)と三者契約を締結し、同年10月より取り組んできたもの。

 共同研究では、郡山市における糖尿病対策の実践的指針を見出すことを基本方針とし、糖尿病治療状況に影響を与える郡山市特有の社会、文化、環境要因を把握することが郡山市においてより効果的なアクションプランの作成につながり、ひいては糖尿病性腎症などの合併症の重症化予防に貢献するものとして、糖尿病の治療中断に影響を及ぼす要因を探るとともに、15地区の特性を知るための調査(インタビュー調査、アンケート調査、データベース解析)を実施した。

 郡山市では、国民健康保険被保険者における生活習慣病患者総数に占める糖尿病患者の人数および割合が年々増加し、人工透析患者の50%以上が糖尿病を合併している。そのため同市では糖尿病に関する正しい知識の普及啓発、特定健診および特定保健指導の普及啓発や健診後の受診勧奨を行うことにより、糖尿病の予防および早期発見・早期治療、重症化予防につなげることが大きな課題となっている。

治療中断者は糖尿病への正しい理解や認識が不足している
患者教育の必要性が改めて示される結果に

 研究では、福島県独自の情報提供システム、国保データベースシステムを用いて抽出した患者の医科レセプトデータを確認し、糖尿病治療の「継続者」「投薬のみ継続者」「中断者」へ分類した。その結果、合計6,050名(継続者5,644名、投薬のみ継続者271名、中断者135名)を抽出した。

 インタビュー調査は、郡山市の各地区担当保健師約30名が対面で実施した。対象者は106名で、「診断当初からの歩みと展望」、「リスク認知の状況」、「健康・糖尿病・人生観」の3つの視点から考察した。

 インタビュー調査の結果から、糖尿病治療を中断する人の傾向として、▼糖尿病治療により経済面の負担や生活に制限が生じると考えていること、▼糖尿病の具体的な経過や生活上の苦労が想像できないこと、▼飲酒が生活に入り込んでいること――などが分かった。

 一方、糖尿病治療を継続できている人は、▼糖尿病による致命的な事態を具体的に想定できており、▼糖尿病になったことで健康の重要さを理解して健康管理への意識が向上していること、▼自立生活を重要視し、介護や家族などへの負担を懸念していること――などが分かった。

 アンケート調査は、20問からなるアンケートを997名に郵送、372名から回答を得た(回収率37.3%)。

 アンケート調査からは、治療中断者では、▼糖尿病への正しい理解や認識が不足している人、▼時間の使い方を自身で自由に決められない人が有意に多いという結果が得られた。

 治療継続者では、家族など身近に糖尿病患者がいる人が多かったことから、治療の必要性を具体的かつ身近に捉えやすいため、治療を継続しやすい可能性が考えられた。

 なお、治療継続者でも、自身が糖尿病であると認識している者の割合は7割程度に留まっており、患者教育の必要性が示唆された。

医師からの情報は重要視するが、食事や運動療法の実践率は高くない

 治療状況に関わらず共通に認められた傾向としては、患者の多くが医師からの情報を重要視している一方で、▼市民公開講座や医師以外の医療従事者から情報を得ている患者が少ないこと、▼糖尿病治療の基本である食事や運動療法の実践率は高くないこと、▼時間的・金銭的負担感があるとの回答が一定数みられたこと――などが挙げられる。

 また、調査実施前に、治療中断理由になりうると仮定していた「交通手段の無さ」「被介護者の存在」「団体活動に参加していないこと」「同居家族がいないこと」「通院手段の不便さ・移動の不便さ」「自由に使えるお金が少ないこと」は、今回の調査で関連性は認められなかった。

 さらに、データベース解析を行い、市内15地区の患者数や治療を中断する割合なども算出した。この結果は、今後、各地区の保健師が介入していく際の参考に使用されるという。

 郡山市は、広報誌やウェブサイト、市民公開講座、イベントなどを通じて同共同研究結果の市民への周知を行うとともに、医療・保健などの関係機関へ情報共有をすることでそれぞれの活動に活かしてもらうほか、2020年度から「郡山市糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を実施し、医療機関未受診者に対する受診勧奨や、 重症化予防対象者への保健指導などを実施していくとしている。

郡山糖尿病共同研究(ノボ ノルディスク ファーマ)
糖尿病対策に関する包括連携協定を締結しました。(郡山市 2018年2月13日)

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