肥満・糖尿病とアルツハイマー病を合併すると寿命がさらに短縮 脳内グリア細胞の関与を示唆

2020.01.07
 国立長寿医療研究センターは、マウスモデルを用いて、アルツハイマー病の原因とされているβアミロイドが肥満・糖尿病マウスの寿命をさらに短くさせることを証明し、さらにそのメカニズムとしてアストロサイト(星状膠細胞)の活性化の関与を示唆する結果を得たと発表した。

βアミロイドが肥満・糖尿病マウスの寿命をさらに短縮

 肥満や糖尿病はアルツハイマー病のリスク因子であり、またアルツハイマー病は糖尿病を悪化させる。それぞれが寿命を短くすることはよく知られている。国立長寿医療研究センターなどの研究グループは今回の研究で、肥満・糖尿病とアルツハイマー病の両方をもつマウスを作製し、それらを合併すると寿命がさらに短縮することを明らかにした。

 研究は、同センター認知症先進医療開発センター分子基盤研究部の篠原充室長と里直行部長の研究グループが、大阪大学および理化学研究所との共同研究として行ったもの。研究成果は「The FASEB Journal」に掲載された。

 脳には神経細胞のほかに、ミクログリアやアストロサイトなどの細胞が存在する。ミクログリアは貪食作用をもった細胞で脳内の不要物を掃除する。アストロサイトは神経細胞と協調しながら脳機能に関わり、血管の細胞と一緒に血液脳関門を形成する。

 研究グループが解析した結果、肥満・糖尿病マウスではこのミクログリアの機能が低下していることが示された。また、肥満・糖尿病マウスの脳内にβアミロイドが加わると、アストロサイトを構成する細胞骨格のひとつであるGFAPが増加し、アストロサイトが反応性に活性化されることが示された。

 GFAPはGlial Fibrillary acidic protein(グリア線維性酸性タンパク質)の略で、アストロサイトの細胞内に存在し、直径10nm程度の管腔構造をもつ細胞を支える支柱の構成成分。GFAPは以前から、加齢により増加することが知られていた。

 研究グループは、「加齢により増加するGFAPが糖尿病とアルツハイマー病の合併で増加することは興味深い。今後は糖尿病とアルツハイマー病の合併で活性化されるアストロサイトの機能を探ることで健康寿命の延伸につながる可能性がある」と、述べている。

 

国立長寿医療研究センター
Increased levels of Aβ42 decrease the lifespan of ob/obmice with dysregulation of microglia and astrocytes(The FASEB Journal 2019年12月16日)

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